演題

胃全摘後に肺癌小腸多発転移により腸重積症を起こした1例

[演者] 上田 悟郎:1
[著者] 桑原 義之:1, 三井 章:1, 杉浦 弘典:1, 高須 惟人:1, 渡部 かをり:1, 早川 俊輔:1, 鎗山 憲人:1
1:名古屋市立西部医療センター 外科

症例は74歳の男性.4年前に胃癌に対して胃全摘術,Roux-en-Y法再建術が施行された.現在まで胃癌の明らかな再発,転移所見は認めていない.3年前に肺腺癌(T1aN3M0)と診断され,化学療法を行っているものの奏功せず腫瘍は徐々に増大傾向であった.今回,突然発症した腹痛を主訴に当院受診となった.CTにて腸重積の所見を認めた.保存的加療によって腸重積は改善し経口摂取も再開となった.腸重積の精査目的に小腸造影を行った所,食道空腸吻合部より15cm程肛門側に1個,Roux-en-Y法再建のY脚吻合部に2個,さらにその肛門側の2カ所にそれぞれ1個,計5個の腫瘤性病変を認めた.腫瘤は全て3~4cm大であった.腫瘤の内視鏡的切除を目的にダブルバルーン内視鏡を予定したが,再度腸重積を発症したため,緊急手術を施行した.開腹所見では,一番肛門側の小腸腫瘍により腸重積が惹起されていた.重積した腸管を用手的に整復した後に,全小腸を触診にて検索したが,術前に確認した5個以外には触知可能な腫瘍は認めなかった.肺癌の多発小腸転移を考え,内視鏡による全腫瘍の確認ができていない事や,多発転移に対する根治手術は困難である事より,腫瘍切除のみを行う事とした.Y脚吻合部以外の3カ所の腫瘍は,それぞれの腫瘍を含めた小腸部分切除術を施行した.Y脚吻合部の2個の腫瘍は,一番口側の部分切除を行った小腸切開部から腫瘍及び小腸粘膜を引き出し粘膜面から腫瘍を結紮切除した.術後の病理検査でも肺癌の小腸転移の診断であった.経過は良好で術後14日目に自宅退院となった.今後も化学療法を継続予定としている.
肺癌が小腸転移し,腸重積を起こした症例は比較的稀であり,本邦において47例の報告があるのみである.その中で小腸に多発転移を認め,外科的切除を施行したのは自験例を含め2例のみであった.肺癌の小腸転移病変の外科的切除例の予後は極めて不良である.腸重積を起こした小腸多発転移に対して,外科的に腫瘍切除を行う意義は,術後のQOLの改善の点において大いにあるが,次の治療へ速やかに移行できるよう侵襲を最小限に留めることが重要である.
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