演題

成人に発症した特発性小腸重積の1切除例

[演者] 石原 敦:1
[著者] 安田 武生:1, 栄 由香里:1, 栄 政之:1, 濱田 徹:1, 塚崎 高志:1
1:ツカザキ病院 外科

症例は64歳,女性.主訴は嘔吐,下痢.2012年に脳幹出血による左半身麻痺,その後介護施設入所中の患者.2016年10月初旬より嘔吐・下痢があり,同日近医を受診した.小腸イレウスの診断で入院の上保存的加療を開始したが増悪し,発症5日後精査加療目的で当院へ紹介された.身長160cm,体重35kg,血圧77/66mmHg,脈拍数113bpm,体温37.2度,SpO2 99%(酸素2L)であった.腹部はやや膨満・軟,腸蠕動音は減弱しており,全体的に圧痛と筋性防御が認められた.入院時の血液検査で白血球数 6600/μl,CRP 22.090mg/dlと炎症反応は上昇していた.CK 65IU/l,LDH 171IU/lと逸脱酵素の上昇はなかった.K 1.5mEq/l,Cl 93mEq/lと電解質異常が認められた.また,Alb 1.3g/dlと栄養状態低下が認められた.腹部CT検査では,小腸に同心円状の層状構造物が認められ,口側腸管の拡張と鏡面像が認められた.また,腹腔内にfree airが認められ,腹水が多量に貯留していた.以上より小腸重積による腸閉塞,腸穿孔と診断し,緊急試験開腹術を行った.開腹すると,腹腔内には混濁腹水が多量に貯留しており,回腸末端から約50cm口側の位置に腸重積が認められ,それより口側の腸管は拡張していた.重積部位口側及び肛門側の腸管に血流不良部位が認められ,一部は穿孔していたため,同部位の小腸部分切除を行った.腸管浮腫は著明であり,吻合は困難と判断し,人工肛門を造設した.切除腸管は全体的に浮腫性に肥厚しており,一部に穿孔や壊死組織が認められたが,肉眼的には明らかな腫瘍性病変は認められなかった.病理組織学的所見は,広範な回腸粘膜の水腫と鬱血が認められ,一部は全層性の腸管壊死と穿孔に陥っていたが,悪性所見は認められなかった.術後は敗血症性ショック,播種性血管内凝固症候群に対する加療が必要であったが,徐々に全身状態,栄養状態は改善し,術27日後にADL改善目的で転院した.成人腸重積は比較的稀な疾患であるが,腸重積は成人の場合は約90%に器質的疾患が存在するとされ,特発性の頻度は極めて稀である.今回我々は,成人に発症した特発性腸重積の1切除例を経験したので報告する.
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