演題

肛門扁平上皮癌症例の検討

[演者] 森 拓哉:1
[著者] 福岡 達成:1, 前田 清:1, 中尾 重富:1, 澁谷 雅常:1, 永原 央:1, 木村 健二郎:1, 天野 良亮:1, 平川 弘聖:1, 大平 雅一:1
1:大阪市立大学大学院 腫瘍外科学

【はじめに】肛門扁平上皮癌は欧米では化学放射線療法(Chemoradiotherapy:CRT)が一般的な治療である.本邦では以前は手術が主流であったが,最近ではCRTをする施設が増えてきている.しかし比較的まれな疾患であり,標準治療が確立されていないのが現状である.今回我々は当施設で経験した肛門扁平上皮癌症例の治療方法および成績について検討を行った.
【対象】当院で1994年1月から2016年10月までに肛門扁平上皮癌と診断された14例を対象とし,患者背景・臨床病理学的特徴・治療法・予後について検討を行った.
【結果】性別は男性4例,女性10例で,やや女性に多く,年齢中央値は65.5歳(47-88歳),UICC分類はⅠ期4例,Ⅱ期5例,Ⅲ期4例,Ⅳ期1例であった.組織型は高分化型1例,中分化型5例,低分化型8例であった.初診時に転移を認めた症例は5例(鼠径リンパ節2例,側方リンパ節2例,肝1例)であった.14例中5例に対してはCRTを行わず,手術を施行した(腹会陰式直腸切断術4例,局所切除1例).再発は4例に見られ,鼠経リンパ節2例,局所2例であった.このうち3例は術後1年以内に死亡していた.一方CRTを行った症例は9例で,併用レジメンは5FU+CDDP4例,5FU+MMC5例,放射線照射は骨盤内及び鼠経リンパ節領域を標的とし,総線量は53-65Gy(中央値58.9Gy))であった.有害事象は皮膚炎4例,好中球減少3例,下痢2例であり,Grade3以上は好中球減少の1例のみであった.効果判定は全例PR以上を得られ,CRは6例(66.7%)であった.CR6例のうち,4例は無再発生存中である.残る2例は鼠経リンパ節,肝に再発を認めたが,いずれも転移巣切除し,健存である.PR3例のうち1例は局所切除を追加することで再発なく生存しているが,残り2例は遠隔転移再発で死亡している.
【考察】肛門扁平上皮癌に対して以前は腹会陰式直腸切断術が施行されることが多かったが,手術単独では再発リスクや人工肛門造設によるQOL低下が問題となり,当施設でもCRTが治療の第1選択となりつつある.当院でのCRT症例は重篤な副作用もなく,比較的局所制御ができており,手術症例に比して予後も良好であった.手術侵襲,手術合併症,QOLの低下などを考慮すると,CRTはQOLを維持しながら根治を期待できる有効な治療法であると考えられた.しかしながら,局所にCR・PRの効果が得られても,遠隔転移をきたすことがあり,注意を要する.
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