演題

PP14-5

Pringle法の合計時間が肝切除後肝不全へ及ぼす影響に関する検討

[演者] 高橋 裕之:1
[著者] 川原 敏靖:1, 萩原 正弘:1, 古郡 茉里子:1, 今井 浩二:1, 松野 直徒:1, 古川 博之:1
1:旭川医科大学医学部 消化器病態外科学

【はじめに】
肝切除後肝不全(Post Hepatectomy Liver Failure:PHLF)は待機的肝切除後の周術期合併症と死亡の主要な原因である.現在PHLFはISGLSにより「術後5日目のPT-INRと血清ビリルビンの両方が施設基準値より高値のもの」と定義されているが,それ以前は施設により様々な定義がなされてきた.そのためPHLFの頻度は文献では1.2%から32%と報告されている.Pringle法は術中出血量の軽減に寄与しており,その有用性や安全性が多数報告されているが,術中合計Pringle時間と術後肝機能障害の関係についての報告は少なく,肝切離時のPringle法の多用とPHLFとの関係は未だ不明である.
【目的】
開腹肝切除症例について,術前肝機能と合計Pringle時間,PHLFを含めた術後肝機能障害との関係を検討した.
【方法】
当科で肝切除を受けた2014年1月から2016年9月までの開腹肝切除症例89例について患者背景,術前肝予備能,手術内容,術後経過を検討した.術前肝機能評価は血液生化学検査,ICGR15,99mTc-GSAシンチグラフィで行った.
【結果】
全症例数89例において平均患者年齢は67.7歳,男性63例・女性26例と男性が多く,平均術前ICGR15は11.4%,平均術前99mTc-GSAクリアランスは346.0ml/minであった.背景肝疾患については肝細胞癌 55例,肝内胆管癌 7例,転移性肝腫瘍 27例であり,ISGLS基準で5例がPHLFと診断された.術中合計 Pringle時間と術後AST・ALT・T-Bilの関係については各々強い正の相関を示した.
PHLFの有無で比較検討するとPHLF (+)群ではPHLF (-)群に比べ年齢(p=0.03),術前99mTc-GSAクリアランス (p=0.01),肝切除方法 (p=0.02),術後max AST (p<0.0001)で有意差を認めた.また,術中合計Pringle時間と術後肝機能障害の間には強い正の相関関係を認めた.
術後5日目T-Bil≧5の有無で比較検討した場合はT-Bil≧5群ではT-Bil<5群に比べ術後max ALT (p=0.03),術中合計Pringle時間 (p=0.0004),手術時間・術中出血量・術後max AST・術後max T-Bil・術後在院日数 (p<0.0001)で有意差を認めた.
【まとめ】
術後5日目T-Bil≧5の症例は術中合計Pringle時間がより長く有意に術後肝機能障害を生じており術後在院日数が延長した.今回の検討では,術後5日目T-Bil≧5がPHLFの指標として有用であると考えられた.また,術後肝不全を避けるために肝予備能が低下している症例に対しては,Pringle時間を短縮するように努めるべきである考えられた.
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