演題

PP14-3

肝切除周術期における大建中湯の有用性

[演者] 宗景 匡哉:1
[著者] 北川 博之:1, 川西 泰広:1, 藤枝 悠希:1, 藤澤 和音:1, 宗景 絵里:1, 志賀 舞:1, 並川 努:1, 花﨑 和弘:1
1:高知大学医学部 外科学講座(外科1)

(背景)近年漢方薬剤は基礎,臨床での研究の結果,エビデンスが蓄積し消化器外科周術期にも適応が拡大している.当科では術後急性期に漢方薬剤を導入し,肝切除症例では術後の腹部膨満に大建中湯を頻用している.大建中湯は乾姜,人参,山椒の3つの生薬に膠飴(コウイ)を加えた漢方で消化管運動障害を背景とした疾患に広く用いられている.また,肝硬変合併肝癌の肝切除や,胆道疾患における大量肝切除を代表として,肝切除術後において,腸管運動麻痺の遷延や,Bacterial translocationの発生等による残肝障害が問題となる.大建中湯は肝切除術後の血中アンモニア濃度の低下や,門脈血流の増加が報告されており,当科での肝切除術後における大建中湯投与の効果を検討した.
(対象と方法)肝切除術後は障害肝を中心に大建中湯を定期投与している.1日7.5gまたは15gを症例に応じて投与した.2016年4月から8月の開腹肝切除症例28例を対象とし,術後大建中湯1日15g投与した12例をA群,1日7.5g投与した6例をB群,非投与10例をC群とし,術後成績を後ろ向きに比較検討した.消化管運動の指標として排ガス排便までの期間,肝障害の指標としてAST,ALTを評価した.
(結果)術後排ガスおよび排便までの期間は,A群,B群,C群でそれぞれ平均2.0日,2.1日,2.1日および平均4.0日,4.8日,4.3日であった.また,ASTはA群で術直後平均384U/Lと最高値を示し,その後低下した.B群で術翌日に平均231U/Lと最高値を示し,その後低下した.C群は術直後に平均211U/Lと最高値を示し,その後低下した.ALTはA群で術翌日に平均263U/Lと最高値を示し,その後低下した.B群で術後2日目に平均230U/Lと最高値を示し,その後低下した.C群で術翌日平均149U/Lと最高値を示し,その後低下した.有意差はみられないが,術後A群はB群に比べてより高度の肝障害を呈するものの,早期に改善する傾向を認めた.さらに排便までの期間が短く,早期に消化管運動が改善する傾向を認めた.
(結語)大建中湯は,最大量を投与することで,肝切除術後の消化管運動障害を改善し,術後肝障害を早期に軽減する可能性が示唆された.今後前向きに検討し,肝切除術後肝障害に対する大建中湯の保護作用を解明したい.
詳細検索