演題

PO14-6

マウス肝虚血再灌流障害におけるprotease-activated receptor 1 agonismの細胞保護効果とbiased agonism

[演者] 伊藤 貴洋:1
[著者] 栗山 直久:1, 加藤 宏之:1, 村田 泰洋:1, 安積 良紀:1, 岸和田 昌之:1, 水野 修吾:1, 臼井 正信:1, 櫻井 洋至:1, 伊佐地 秀司:1
1:三重大学大学院 肝胆膵・移植外科学

【背景と目的】
肝切除や肝移植における肝虚血再灌流障害(IRI)の制御は現在においても重大な課題である.我々はこれまでに,抗凝固活性を有するactivated protein C (APC)の 肝IRI実験モデルにおける肝保護効果を報告してきた.しかし,APCはその出血性副作用のため周術期の使用は困難である.APCには抗凝固作用以外の細胞保護シグナル伝達の1つに,内皮細胞のEPCRを介し,protease-activated 1(PAR1)を活性化させる経路がある.そこで,PAR1を選択的に活性化すれば抗凝固作用を示すことなく,細胞保護のみを期待できると仮説をたてた.一方,PAR1はAPCの細胞保護シグナルを介すると同時に,thrombinの受容体として細胞障害性シグナルを介することも報告されている.今回我々は,2つのPAR1 agonist peptide(APCの作用部位に結合するTR47(NPNDKYEPFWEDEEKNESGL)とthrombinの作用部位に結合するTFLLR)を用いて肝IRIにおけるPAR1の役割について検証した.
【方法】
C57BL6マウスにて60分間の70%肝IRIモデルを作成し,2つの異なるPAR1 agonistであるTFLLRとTR47をそれぞれ経静脈的に投与(control群では生理食塩水)した.再灌流後4時間でsacrificeし血清,肝組織を採取し,TR47群,TFLLR群, control群の3群に分け比較検討した.
【結果】
TR47群ではcontrol群と比較し,血清transaminaseの有意な低下 (AST: 2,765±200 vs 4,110±1,005, ALT: 2,781±893 vs 4,117±398 IU/L, p<0.05)と, 組織学的にSuzuki's scoreの改善(4.8±2.2 vs 7.4±0.9, p<0.05)を認め,肝障害が軽減された.さらにTR47群ではIRI肝でのLy6G陽性細胞が有意に減少(22.3±4.0 vs 30.0±5.7/HPF, p<0.05)し, 血管内皮同士の接着,安定に関与するvascular endothelial cadherinの発現が高値(0.91±0.16 vs 0.53 ±0.10 /Actin, p<0.01)であった.TFLLR群はcontrol群と比較し血清transaminase値や組織学的には有意な変化は認めなかった.
【結論】
肝IRIにおいてPAR1 agonismは作動薬の作用する部位によって異なる役割を果たし,APCの作用部位に結合するagonist peptide, TR47は内皮細胞の安定化と炎症細胞浸潤を抑制することで,肝に保護的に作用する.TR47は抗凝固作用なく細胞保護効果のみを示す治療ターゲットになりうると考えられた.
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