演題

PO13-3

肝細胞癌における低酸素状態・Sphere形成状態を制御するmicroRNAの解析と治療への展開

[演者] 吉田 佳弘:1
[著者] 吉住 朋晴:1, 伊藤 心二:1, 本村 貴志:1, 長津 明久:1, 原田 昇:1, 播本 憲史:1, 池上 徹:1, 副島 雄二:1, 前原 喜彦:1
1:九州大学大学院 消化器・総合外科学

【背景】蛋白質をコードしないmicroRNAは,転写レベルで遺伝子制御を行い,様々な癌種の進展に重要な役割を果すと言われる.肝細胞癌(HCC)は,低酸素状態においても増大し,TACEなどの治療に対して抵抗性を示す.一方,Sphere形成は癌幹細胞(CSC)の分化誘導を促し,癌の進展や転移と相関があることが報告されている.HCCにおいて,低酸素状態・Sphere形成状態を制御するmicroRNAを同定,臨床症例において検討を行った報告はない.
【目的】低酸素状態・Sphere形成状態を制御するmicroRNAを同定,機能解析を行うことで,HCC悪性化の本質に迫り,革新的治療へ展開する.
【方法】1.肝癌細胞株Huh7を用いて,定常酸素状態下の平板培養,sphere培養,低酸素状態下の平板培養を行い,Microarray Assayを用いて,それぞれの条件下で発現する遺伝子とmicroRNAを網羅的解析した.定常酸素状態下の平板培養と比較して,Sphere培養,低酸素状態下の平板培養で共通の変化を来すmicroRNAを選択した.microRNAを発現亢進・抑制を行い,増殖能や浸潤能への影響を評価した.microRNAの標的遺伝子を同定し,その発現亢進・抑制を行うことで,Sphere形成に及ぼす影響を検討した.2.2007年1月から2012年12月までに当科で施行された初発HCC切除症例(n=144)において,選択されたmicroRNAの発現の多寡をリアルタイムPCRで確認,臨床病理学的因子との相関を解析した.
【結果】1.Huh7を用いてSphere形成細胞を樹立.Sphere形成細胞は通常細胞と比較して増殖能は低下するが,酸化ストレス耐性が亢進した.低酸素状態,Sphere形成状態で共通の変化を認めたmicroRNAを同定した(miR-X).2.miR-X発現亢進群(n=41)は発現低下群(n=97)と比較して,腫瘍径 (3.6cm vs 5.7cm, p<0.01),vp陽性率(26.3% vs 48.8%, p=0.01),vv陽性率(11.6% vs 26.8%, p=0.03),im陽性率(13.7% vs 29.3%, P=0.03)の増加とTNM stage進行(I,II/III,IV:71例/24例 vs 20例/21例, p<0.01)を認め,全生存期間(p=0.00199)と無再発生存期間(p=0.00168)の有意な低下を認めた.
【まとめ】HCCにおけるsphere形成は酸化ストレス耐性獲得の一つと考えられ,Sphere形成に関わるmicroRNAを制御することで予後改善につながる可能性が示唆された.
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