演題

PN16-7

ピエゾ駆動方式パルスウォータージェットメスを用いたヒト摘出肝における臓器物理特性と臓器切開能力の検討

[演者] 横沢 友樹:1
[著者] 中西 史:1, 中野 徹:1, 山田 誠人:1, 中川 敦寛:2, 冨永 悌二:2, 亀井 尚:1
1:東北大学大学院 先進外科学, 2:東北大学大学院 神経外科学分野

【はじめに】
ウォータージェットメスは組織への熱損傷が少なく,組織選択制を有するために,肝切除に応用されているが,既存の連続噴流を用いたデバイスは,水量の多さによる飛沫や視野の悪化,切開深度の微調整の困難さ等の課題を有している.我々が開発中のピエゾ駆動方式パルスウォータージェットメス(ADPJ)はこれらの欠点を改善し,ブタを用いた生存実験では安全に肝切除が行えることを示してきた.
しかし,実臨床の肝切除では背景に肝硬変を有することも多く,正常肝と比べて出血しやすいなど,難易度が高くなる.そこで,今回我々は,硬変肝を含むヒト摘出肝の臓器物理特性とADPJの切開能力を検討したので報告する.
【目的】
ヒト摘出肝における臓器物理特性を調べ,ADPJの駆動電圧と臓器切開能力に相関があるか検討する.
【方法】
当院において摘出されたヒト肝臓の物理特性を評価するため,小型卓上試験機を用いて,組織の硬さの指標となる破断応力値を測定した.また,同じ検体を用いて,駆動電圧をパラメーターとして,ADPJによる切開深達度を測定した.
【結果】
実験に用いたヒト摘出肝は8検体(肝硬変:7検体,転移性肝癌非腫瘍部=非硬変肝:1検体)であった.非硬変肝における破断応力値は平均:1.52±0.23Mpa,中央値:1.46Mpa,硬変肝では平均:4.50±3.65Mpa,中央値:3.67Mpaであった.また,硬変肝は個体間ばかりでなく同一個体間でのばらつきも大きかった.
駆動電圧と切開深度には非硬変・硬変肝ともに正の相関を認め,破断応力値と切開深度には硬変肝で負の相関を認めた.非硬変肝は得られた検体が1検体のため評価できなかった.
【考察】
非硬変肝に対して硬変肝では破断応力値は大きく,肝切除を行う際,より強い切開能力が必要となる.ADPJは硬変肝においても,駆動電圧・破断応力値と切開深度には相関がみられたことから,水量を増やさず駆動電圧により切開深度が調節可能である.先行研究ではブタ生体肝の肝静脈とグリソン鞘の破断応力値は,それぞれ8.66 ± 1.70 MPa,29.6 ± 11.0 MPaであり,今回得られた硬変肝と比べその値は大きいので,硬変肝でも脈管を適切に温存し肝切除を行える可能性が示唆された.
【結論】
硬変肝を含むヒト肝切除においても,ADPJの駆動電圧を調整することで脈管を温存しつつ切除を行える可能性が示唆された.
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