演題

PN14-7

当院における抗ドナー抗体(DSA)肝移植の検討

[演者] 柿本 忠俊:1
[著者] 江川 裕人:1, 小寺 由人:1, 大森 亜紀子:1, 尾形 哲:1, 根本 慧:1
1:東京女子医科大学病院 消化器外科

【はじめに】臓器移植において抗ドナー抗体(Donor specific antibody,以下DSA)は移植片への拒絶反応に関与し,移植予後に影響を及ぼすとされる.移植前にDSAの有無を把握することでドナー適合性や前処置の必要性を確認するとともに,移植後にDSAが産生され拒絶反応を起こす可能性があり移植後のモニタリングが重要となる.今回我々は当院で経験したDSA陽性生体肝移植に関して術前後のDSAと臨床経過について後方視的に検討したので報告する.【対象と方法】2013年から2016年に当院で施行した生体肝移植48例のうち術前にDSA高値を認めた5例を対象とした.対象は全例女性,平均年齢は59.5歳,原疾患は非代償性C型肝硬変1例,アルコール性肝硬変1例,NASH2例,原発性胆汁性胆管炎1例であった.術前MELD scoreは平均21.4点であった.2例は術前DSA class Ⅱのみ強陽性,3例はDSA class Ⅰ・Ⅱとも強陽性であった.全例に術前Rituximab投与および脾摘術を追加した.術後はTacrolimus・MMF・Steroidの三剤を併用した.Tacrolimusの血中濃度はpeak値8~10ng/mlを目標とした.DSAの測定にはリンパ球細胞障害試験(LCT法)・フローサイトメトリー法・ルミネックス法を使用した.【結果】5例中1例は人工透析シャント感染に伴う敗血症で術後13か月目に死亡,4例は現在も生存中である.DSA classⅠは3例で陰性化,他2例もMFI1000前後で推移した.class Ⅱは1例のみで強陽性を認めた.1例に術後2週間以内の急性細胞性拒絶反応を認めたため,Steroid pulse療法を追加した.全例とも液性拒絶反応は認めなかった.3例に胆管吻合部狭窄を認めたがいずれも保存的に改善した.Tacrolimus血中濃度との相関関係を認め,Tacrolimus血中濃度を10 ng/mlで維持することで液性拒絶反応を回避しうると考えられた.【考察】生体肝移植後の急性拒絶反応は細胞性免疫が主体であるとされているがこれに液性免疫が加わると治療反応性が低下し重篤化するといわれている.Terasaki PIはHLA抗体が超急性拒絶から慢性拒絶に至る全ての拒絶反応にかかわる原因と提言しており特に術前から抗HLA抗体強陽性症例では拒絶反応の発症に十分な注意が必要である.TacrolimusおよびMMFはともに細胞性免疫・液性免疫の両方を抑制するため,DSA抗体陽性生体肝移植においては術前Rituximab投与に加えTacrolimusおよびMMFを適切に使用することにより急性液性拒絶反応を回避できる可能性があると考えられた.
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