演題

PN14-6

自己抗体マイクロアレイによる肝移植後急性拒絶反応の非侵襲的な新規バイオマーカーの同定

[演者] 大久保 恵太:1,2
[著者] 和田 浩志:1, 田中 淳:2, 江口 英利:1, 野田 剛広:1, 浅岡 忠史:1, 後藤 邦仁:1, 坂口 志文:2, 土岐 祐一郎:1, 森 正樹:1
1:大阪大学大学院 消化器外科学Ⅰ, 2:大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 実験免疫学

【目的】肝移植は末期肝硬変や急性肝不全に対する治療法として確立されつつあるが,周術期死亡率は約15%と高率である.特に急性細胞性拒絶反応 (ACR) は肝移植後の30~70%の症例で生じ,グラフト機能不全に直結する合併症である.現在,ACRの診断には肝生検による病理検査が必要であるが,侵襲性が高い上に病理所見でのみ確定診断することは難しい.そこで非侵襲的かつ的確にACRを診断するバイオマーカーが望まれている.我々は抗原抗体反応によって発現が増幅される自己抗体に着目し,ヒト自己抗体マイクロアレイを用いて肝移植後のACRに特異的なバイオマーカーを同定することを目的とした.
【対象および方法】ACRに特異的なバイオマーカーのスクリーニングとして,HCV陽性患者の中で肝移植後に病理学的にACRと診断した3例をACR群とし,対照群として術後経過良好な症例の術前,術後28日目,術後1年目および健常人それぞれ3例と比較した.これらの血清を用いて自己抗体マイクロアレイにて網羅的に自己抗体の発現を解析した.候補の選出にはFold Changeに加えて各抗体のシグナル強度を加味して解析するWAD法とMann-Whitney U検定を用いた.検証実験として,病理学的にACRと診断された20例を拒絶群とし,対照群として肝移植後にACR以外の原因で肝障害・肝機能低下を認めた20例,肝移植後安定期の症例20例および健常人20例の血清を用いて,候補となる自己抗体の発現をELISA法で比較検討した.また,候補となる自己抗体のACR前後の抗体価の推移を検討した.
【結果】自己抗体マイクロアレイで,各対照群と比較してACR群で2倍以上に発現量が上昇していた自己抗体は57種類あった.これらの候補より,WAD法およびMann-Whitney U検定で拒絶の診断に有用と考えられる4つの自己抗体(CHMP2B, KCTD14, KCNAB3, TPI1)を選出した.ELISA法では,CHMP2B,TPI1の自己抗体は,全ての対照群と比較して拒絶群で有意に上昇しており,ROC曲線よりAUCを算出したところ,特にCHMP2Bの自己抗体は感度,特異度が高くACRを診断する上で有用なバイオマーカーであると考えられた.また,TPI1の自己抗体はACRに特異度が高いバイオマーカーであった.ACR前後のCHMP2BおよびTPI1の抗体価はACR時に上昇し治療後に低下していた.
【結論】自己抗体マイクロアレイを用いて同定したCHMP2BおよびTPI1に対する自己抗体は,ACRを非侵襲的に診断する有用なバイオマーカーとなりうる.
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