演題

PL16-2

肝細胞癌手術における自己血貯血の利点と欠点

[演者] 今井 寿:1
[著者] 長田 真二:1, 松井 聡(岐阜大学大学院):1, 棚橋 利行:1, 田中 善宏:1, 松橋 延壽:1, 高橋 孝夫:1, 山口 和也:1, 吉田 和弘:1
1:岐阜大学大学院 腫瘍外科学

【目的】自己血貯血は出血リスクの高い手術において同種血輸血のリスクを低減することが可能な方法であり,当科でも肝細胞癌症例において術前待機期間に自己血貯血を積極的に行ってきた.しかし,担癌症例における腫瘍細胞などの移入の可能性も報告されており,最近ではその頻度は減少傾向にある.今回,肝細胞癌手術症例を集積し,術前自己血貯血の利点と欠点についてretrospectiveに検討した.【方法】2004年6月から2015年12月までに当科で施行した肝細胞癌手術症例を対象とし,初診時のヘモグロビン値(Hb)が10mg/dL未満の症例は除外した.術前貯血症例における自己血使用状況,自己血遺残状況を調査し,自己血貯血の有無による周術期のHbの変化,同種血輸血率,手術時間,出血量,術後合併症について非貯血症例と比較検討した.【結果】対象は130例で,年齢の中央値は71歳(39~85歳),男性102例,女性28例であった.106例(81.5%)で自己血貯血が行われ,貯血量は1200mLが62例(58.5%),800mLが42例(39.6%),400mLと1600mLがそれぞれ1例であった.術中自己血使用率は91.5%と高率であったが,術後自己血残存率も77.4%と高率であった.41.5%の症例は残った自己血を術後入院期間中に返却していたが,最終的には49.1%の症例で不使用の自己濃厚赤血球(RCC)が残る結果であった.24例の非貯血症例との比較では,手術時間,出血量,術中アルブミン製剤使用率,術後合併症発生率,術後在院日数には差を認めなかったが,術中同種血RCC使用率は非貯血症例で33.3%であったのに対し,貯血症例では6.6%と有意に低率であった(p<0.01).初診時Hbの中央値は非貯血症例で13.0mg/dL(10.4~15.3),貯血症例で13.4mg/dL(10.0~17.0)と貯血症例で有意に高値であったため(p=0.04),Hbの推移を初診時からの変化で評価したところ,術直前Hbの中央値は非貯血症例で-0.2(-2.9~+1.8),貯血症例で-1.8(-6.3~+1.5)と非貯血症例で有意に高値であったが(p<0.01),術後第1病日および術後第7病日のHbには両群間の差は認めなかった.【結語】肝細胞癌手術症例における術前自己血貯血は,術中使用率も高く,同種血輸血が必要となる症例を減らすことが可能である.しかし,不使用自己血の遺残が問題点であり,自己血貯血の適応症例,適切な貯血量について今後検討していく予定である.
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