演題

PK15-7

糖質制限高脂肪食が腸管虚血再灌流後の循環動態およびnitric oxide産生に与える影響について

[演者] 渡邊 智記:1
[著者] 深柄 和彦:2, 村越 智:2, 守屋 智之:1, 李 基成:2, 安原 洋:2, 山本 順司:1, 上野 秀樹:1
1:防衛医科大学校医学部 外科学, 2:東京大学附属病院 手術部

[背景]近年,肥満患者への糖質制限高脂肪食(Low carbohydrate-high fat diet以下LCHFD)による栄養介入が,循環器疾患リスク・耐糖能の改善に有効と報告されているが,外科侵襲後生体反応に及ぼす影響は不明である.これまでに我々は比較的長期間(3週間)のLCHFD摂取が腸管虚血再灌流(gut I/R)後早期の予後改善をもたらすことを報告した.Gut I/Rの早期死因として循環不全が,後期死因として臓器障害が知られており,予後改善の機序として循環動態及び腸管障害の評価を行った.
[方法]マウス(n=50)を通常食群(以下N群)とLCHFD群(以下LCHFD群)の2群に分け食餌を3週間自由摂取させた.食餌の組成内容(カロリー比率)は通常食;炭水化物 65% 脂質16% アミノ酸 19%,LCHFD食;炭水化物20% 脂質62% アミノ酸18%であった.その後,麻酔下に上腸間膜動脈を60分間遮断することでマウスに腸管虚血再灌流処置を施し,以下の検討を行った.
1) 局所血流評価として腸管虚血開始前から再灌流後90分まで,小腸腸管壁血流を10分毎にlaser doppler装置で計測した.(各群n=5)
2) 全身の末梢循環評価として尾静脈血流を腸管虚血開始前から再灌流後6時間まで,20分毎にlaser doppler装置で計測した.(各群n=5)
3)マウスを虚血前,再灌流後3時間及び6時間に犠死せしめ小腸を採取.再灌流後6時間の腸管組織障害度をChiu scaleで評価(各群n=5).さらに小腸組織中のnitric oxide(NO)値を測定した(各時間帯ともに各群n=5).
[結果]1) 再灌流後両群ともに腸管壁血流の回復を認めたが,LCHFD群はN群と比べ有意に血流回復に改善がみられた(p<0.05).
2) 再灌流後両群ともに尾静脈血流の低下を認めたが,LCHFD群はN群と比べ有意に血流低下の軽減がみられた(p<0.05)
3) 再灌流後6時間の小腸障害度はN群3.6±0.3,LCHFD群2.9±0.3であった(p<0.05).虚血前,再灌流後3時間,6時間での小腸組織中のNOの値はN群,LCHFD群の順に虚血前;0.06±0.02nmol/mg vs 0.13±0.02nmol/mg(p<0.05),3時間;1.73±0.11nmol/mg vs 0.88±0.11nmol/mg(p<0.05),6時間;3.24±0.13nmol/mg vs 2.00±0.13nmol/mg(p<0.05)であり,虚血前はLCHFD群で有意にNO levelが高く,逆に再灌流後は有意に低かった.
[結語]LCHFDの摂取はgut I/R後の小腸組織中のNO levelの著しい増加を抑制しており,小腸組織障害軽減の機序の一つとして過剰なNO産生の制御が腸血流・全身循環の維持に関連する可能性が示唆された.
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