演題

PK15-1

食道癌においてNrf2はグルタチオン代謝への代謝リプログラミングを介して細胞増殖を促進する

[演者] 北野 雄希:1
[著者] 馬場 祥史:1, 中川 茂樹:1, 岩槻 政晃:1, 坂本 快郎:1, 山下 洋市:1, 吉田 直矢:1, 馬場 秀夫:1
1:熊本大学附属病院 消化器外科

【背景】がん細胞は自らの増殖能の維持のために膨大なエネルギーを産生・消費しており,その際に様々な代謝経路へのリプログラミングを活用している.転写因子NF-E2-related factor 2 (Nrf2)は生体の酸化ストレス防御機構において中心的役割を果たしているが,様々ながんにおいてNrf2が恒常的に活性化し,予後不良因子となることが明らかになった.恒常的に活性化したNrf2はグルタミン代謝やペントースリン酸経路を活性化し,がん細胞に有利な代謝環境を実現し,がんの増殖・進展に貢献している.しかし食道癌におけるNrf2の機能的役割は未だ明らかになっていない.
【方法】10種の食道癌細胞株を用いてin vitro実験(Growth assay, Apoptosis assay, ROS detection assay)を行なった.質量分析器を用いて,食道癌細胞株TE-11と食道癌切除サンプルのmetabolite測定を行った.さらに201例の食道癌切除サンプルを用いて免疫組織染色を行い,臨床病理学的予後との相関を解析した.
【結果】食道癌細胞株におけるNrf2発現量をreal time PCR法とWestern Blot法にて確認した.高発現株のNrf2 knockdownにて増殖能が著名に低下することをGrowth assayで確認し,フローサイトメトリーにてG0/G1 Cell cycle arrest,アポトーシスの増加を認めた.またNrf2 knockdownにてROS活性が上がり,その結果p38MAPKのリン酸化を介してCyclinD1を抑制することを確認した.食道癌細胞株を用いた質量分析器によるメタボローム解析の結果,Nrf2はグルタチオン代謝を著名に誘導していることが分かり,食道癌切除サンプル20例においても,Nrf2高発現症例では有意にグルタチオン含有量が多かった(P=0.009).最後に食道癌切除サンプルの免疫組織染色では,非癌部に比べ癌部でNrf2は高発現であり(P<0.0001),癌部の高発現群が91例,低発現群が110例であった.病理組織学的因子ではNrf2発現量は深達度(P=0.04),リンパ節転移陽性率(P=0.002),Stage(P=0.001)と相関を認め,無再発生存率(HR=2.9, P=0.0004),全生存率(HR=2.6, P<0.0001)と予後との相関も認めた.
【結論】食道癌においてNrf2がグルタチオン代謝への代謝リプログラミングを促進し,ROSを制御することでがんの増殖に関与しており,また臨床サンプルを用いた免疫染色においてもNrf2高発現は予後不良因子となることが明らかになった.今後Nrf2を標的とした治療戦略の確立に向けさらに詳細な検討を行いたい.
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