演題

術前抗血栓療法中の胃切除患者に対する周術期抗血栓療法の検討

[演者] 原田 仁:1
[著者] 金治 新悟:1, 山本 将士:1, 松田 佳子:1, 松田 武:1, 押切 太郎:1, 角 泰雄:1, 中村 哲:1, 鈴木 知志:1, 掛地 吉弘:1
1:神戸大学附属病院 食道胃腸外科

【背景】術前抗血栓療法中の胃切除では,出血リスク軽減のために周術期に抗凝固薬や抗血小板薬を中止することが広く行われている.一方で,術前抗血栓療法の中止による術後血栓塞栓症合併も懸念される.当科では術前抗血栓療法患者に対する胃切除の際は,症例ごとの周術期血栓塞栓症や出血リスクに応じて,抗血小板薬継続や抗凝固薬の周術期ヘパリン化を行っている.【目的】周術期抗血栓療法の有無における胃切除後の血栓塞栓症,出血性合併症発生について検討し,術前抗血栓療法中の患者に対する周術期抗血栓療法の安全性を明らかにする.【方法】2014年1月~2016年6月に胃切除を行った205例を対象に,術前抗血栓療法群53例と術前抗血栓療法を行っていないコントロール群152例の短期手術成績(手術時間,術中出血量,術中輸血,術後合併症,術後在院日数)について後方視的に検討した.【結果】術前抗血栓療法群の投薬内訳は抗血小板薬37例,抗凝固薬21例(重複あり)であり,抗血小板薬内服継続を14例,周術期のヘパリン化を23例に行った.術前抗血栓療法の有無で手術時間,術中出血量,術中輸血の有無,術後合併症発生に差は認めなかったが,術前抗血栓療法群で有意に術後在院日数が延長していた(23.5±17.6 vs 18.0±11.6日, P<0.05).さらに,術前抗血栓療法群のみの検討ではヘパリン化を行った症例で,入院期間が延長していた.術後出血は205例中8例(術前血栓療法群3例,コントロール群5例)で認め,両群で術後出血発生率に有意差は認めなかった(5.7 vs 3.3 %, P=0.44).術後出血例の内訳は腹腔内出血3例,吻合部出血1例,腸管出血4例(重複なし)であった.術後消化管出血を認めた3例中2例に術後ヘパリン投与がされており,抗凝固薬内服の転換時期にPT-INR高値及びAPTT延長を認めていた.術後血栓塞栓症は両群で1例ずつ脳梗塞を合併したが,両群間で有意な差は認めなかった(1.9 vs 0.7 %,P=0.55).【まとめ】術前抗血栓療法中の胃切除では,ヘパリン化に伴う術後在院日数の延長を認めるが,術後血栓塞栓症や出血性合併症を増加させることなく安全に施行可能であった.しかし,術後にヘパリンから抗凝固薬へ転換させる際に過剰な抗凝固を伴う消化管出血を認めており,より厳密な抗凝固コントロールが必要である.
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