演題

ロボット支援胃切除における術後肝障害

[演者] 日景 允:1
[著者] 徳永 正則:1, 幕内 梨恵:1, 入野 誠之:1, 谷澤 豊:1, 坂東 悦郎:1, 川村 泰一:1, 絹笠 祐介:2, 杉浦 禎一:2, 寺島 雅典:1
1:静岡県立静岡がんセンター 胃外科, 2:静岡県立静岡がんセンター 外科

【背景】
腹腔鏡下胃切除術(Laparoscopic gastrectomy; LG)では術野確保のために肝挙上が必要である.肝挙上法に用いられるネイサンソン圧排鈎は機械的圧迫による局所的肝阻血により,術後早期に肝機能障害を引き起こすことが報告されている.近年施行が増えているロボット支援下胃切除術(robot-assisted gastrectomy; RG)でも同様の肝挙上が必要であるが,RG術後早期の肝機能障害に関する報告は少ない.RG術後早期の肝機能変化を評価する目的で,RGとLGの手術短期成績を比較検討した.
【対象・方法】
2012年1月から2015年4月の間,当科にて施行した胃癌R0手術症例のうち,RG(140例)・LG(222例)を対象とし,手術短期成績を後方視的に比較した.
【成績】
患者背景では,RGで年齢が若く(RG vs LG; 64 vs 67歳,P < 0.001),ASA-PSスコアが良好(P = 0.040),異時・同時性重複癌(5.0 vs 18.5 %,P < 0.001)が少なかった.術式はRGで幽門側切除74例/全摘11例/幽門保存切除52例/噴門側切除3例,LGで幽門側切除140例/全摘11例/幽門保存切除67例/噴門側切除4例.RGでは全例で肝挙上が行われていた(100 % vs 89.6 %,P < 0.001).RGでは手術時間(338 vs 285分,P < 0.001)・麻酔時間(386 vs 336分,P < 0.001)・気腹時間(291 vs 233分,P < 0.001)が延長していた.両群とも術中有害事象は認めなかった.術後,総ビリルビン値・AST値は両群有意差を認めなかったが(POD1 / POD3/ POD6; 49 vs 41/ 29 vs 26/ 24 vs 23,いずれもP > 0.05),ALTはRG群で有意に高値を示した(POD1 / POD3/ POD6; 42 vs 33/ 39 vs 29/ 36 vs 29,P = 0.006/ < 0.001/ 0.004).Clevien-Dindo Grade II以上の術後合併症発生には有意差を認めず(15.0 vs 20.7 %,P = 0.211),両群に肝不全等の重篤な肝障害の発生を認めなかった.術後にCTCAE Grade 2以上の肝酵素上昇を認めた症例についてその予測因子を多変量解析で検討したところ,AST・ALTとも術前肝酵素高値・左副肝動脈切離・手術時間300分以上が独立予測因子として抽出されたが,手術アプローチ・肝挙上施行は該当しなかった.
【結語】
RGはLGと比較し術後のALTが高値であり,手術時間の延長が原因と考えられた.本検討では一過性の肝酵素上昇による術後経過への影響は無かったが,術前肝酵素高値の症例,左副肝動脈切離が必要な症例では術後肝障害が生じやすく注意が必要である.
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