演題

下部直腸癌に対する直腸間膜全切除+側方リンパ節郭清を中心とした治療戦略

[演者] 諸橋 一:1
[著者] 坂本 義之:1, 吉田 達也:1, 長谷部 達也:1, 三浦 卓也:1, 袴田 健一:1
1:弘前大学大学院 消化器外科学

【背景と目的】当科の下部直腸癌に対する基本術式は, 術前の画像診断による側方リンパ節(LPLN)転移の有無に関わらず腫瘍下縁が腹膜翻転部より肛門側にあるcT3以深の症例に対し, 直腸間膜全切除(TME)+両側側方郭清(LPLD)とし,最近は主に腹腔鏡下で行なっている.JCOG0212試験でLPLDによる局所再発抑制効果が示されたが,郭清の範囲や手技に関しては施設間で必ずしも一致しておらず,標準治療に至るには議論がある. 当科の治療成績を示し有用性と問題点を検討する.
【対象と方法】対象は1994年から2016年までにLPLDを行った下部直腸癌419例として患者背景因子と治療成績を検討した.検討項目は1)LPLDの治療成績, 2)予後規定因子, 3)腹腔鏡(L群)/開腹(O群)LPLDの治療成績とした.
【結果】1)平均年齢は62歳,男/女性は189/230例であった.LPLN転移率は17%であり転移陰性/陽性例の5生率は79/42%であった(p<0.01). #263リンパ節転移例/その他のLPLN転移例の5生率は58/17%(p<0.01),片側/両側LPLN転移例の5生率は57/27%(p<0.01)であった.再発率は全体で23%,局所再発が9%,遠隔転移が17%で遠隔再発が多く,特にLPLN転移陽性例で多い傾向が認められた.2)予後規定因子の解析では, 腸間膜リンパ節転移, リンパ管侵襲,静脈侵襲,高分化腺癌以外の組織型,T3以深の深達度が独立した危険因子であった.3)平均手術時間はL/O群で200/305分でL群が長く(p<0.01),平均出血量は624/135gでO群が多かった(p<0.01).リンパ節郭清個数は27.3/26.8個で有意差は認められなかった.術後合併症はL群で有意に少なく,特に,排尿障害とSSIが少なかった.
【結語】側方郭清は下部直腸癌の予後延長に有効であり,特に#263リンパ節郭清の効果は高いと考えられる.しかし,LPLN転移陽性例は遠隔再発が多いため,全身化学療法を加える必要がある.腹腔鏡下LPLDにより,出血量の減少と合併症の軽減が期待される.また,鏡視下手術により,LPLDの手技や解剖学的ランドマークに基づいた郭清範囲を明確にすることが可能となり,より正確な議論が可能となると考えられる.
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