演題

レネック被膜の局所解剖からみた肝切除の要点と盲点

[演者] 杉岡 篤:1
[著者] 加藤 悠太郎:1, 棚橋 義直:1, 三井 哲史:1, 香川 幹:1, 木口 剛造:1, 小島 正之:1, 安田 顕:1, 中嶋 早苗:1, 宇山 一朗:1
1:藤田保健衛生大学医学部総合消化器外科

はじめに
低侵襲手術を含む解剖学的肝切除を安全かつ確実に実施するための要点は,1)肝外グリソン鞘一括先行確保,2)主肝静脈の剥離・露出,3)One-way肝切除による過不足のない肝切除である.われわれは,レネック被膜に基づく新たな肝解剖の概念を提唱し(JHBP Sci. 2017;24:17-23.),あらゆる肝切除術式の標準化を行ってきた.レネック被膜は無漿膜野を含む肝表面全体を覆うとともに肝内に入り込みグリソン鞘および主肝静脈周囲の肝実質を覆っており,この膜の局所解剖を理解することにより肝切除が標準化される.
要点
1)肝外グリソン鞘一括先行確保
肝実質を覆うレネック被膜とグリソン鞘との間には間隙が存在し,肝実質を破壊することなく肝外グリソン鞘を一括先行確保することができる.レネック被膜とグリソン鞘の間隙にアプローチできる部位は限られており,手技の標準化のためには4つの解剖学的指標と6つのゲートに正確にアプローチしなければならない.右葉グリソン鞘は胆嚢板胆嚢摘出術を起点とし,左葉グリソン鞘はアランチウス板と臍静脈板を起点とすることで肝外に引き出して安全確実に処理することができる.
2)主肝静脈の剥離・露出
主肝静脈の周囲肝実質もレネック被膜に覆われているが,肝静脈壁に強固に癒着している.主肝静脈根部から頭尾方向に肝離断を進めることによりレネック被膜を肝静脈壁に温存しながら,安全確実に剥離・露出することができる.
3)One-way肝切除
肝実質切離においては,常に頭尾方向の肝切離を行うことにより,主肝静脈の剥離・露出と肝切離面の平坦化が得られ過不足のない肝切除が可能となる.
盲点
レネック被膜は慣れれば肉眼的に光沢のある面として認識できるが,最初に6つのゲートにおいて剥離面を正確に確認することが必須である.高エネルギーデバイスを多用すると正しい層を確認できず,さらに出血をきたすことになる.この操作にはirrigation bipolar forcepsによる剥離操作に習熟することが重要であり,腹腔鏡用のデバイスの開発が急務である.
おわりに
レネック被膜の局所解剖を熟知することにより,尾状葉全切除を含むあらゆる解剖学的肝切除のみならず,肝門部腫瘍,生体肝移植手術,門脈腫瘍栓症例,高度胆道損傷例など高難度手術が標準化され,安全確実に実施可能となり,肝臓外科のさらなる発展が期待される.
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