演題

腹腔鏡下噴門側胃切除術の適応からみた胃上部早期癌の深達度診断に関する問題点

[演者] 神津 慶多:1
[著者] 辻本 広紀:1, 平木 修一:1, 菅澤 英一:1, 堀口 寛之:1, 野村 信介:1, 青笹 季文:3, 長谷 和生:2, 山本 順司:3, 上野 秀樹:2
1:防衛医科大学校病院 外科1・上部消化管外科, 2:防衛医科大学校病院 外科1・下部消化管外科, 3:防衛医科大学校病院 外科3・肝・胆・膵外科

【緒言】U領域の早期癌は,低侵襲な機能温存手術である腹腔鏡下噴門側胃切除術(LPG)の適応となるが,術後の組織学的検査で進行癌と診断される症例もあり,術前の深達度診断は非常に重要である.今回われわれは,U領域胃癌における深達度の正診率を検討し,LPGを術式選択する際の問題点を検討した.
【対象と方法】2009年から2015年の間に,当科で腹腔鏡下胃切除術を施行したcT1の218例(LPG26例,胃全摘(LTG)32例,幽門側胃切除104例,幽門輪温存胃切除56例)を対象とし,術前の深達度診断の正診率と,正診率に影響を及ぼす因子についてretrospectiveに検討した.術前検査として胃透視,腹部CT,上部消化管内視鏡が全例に施行されていた.深達度診断が術前診断と病理診断で一致した185例(84.9%)を正診群,病理診断と比して術前診断で浅く判断した33例(15.1%)を過小評価群とし,両群における臨床病理学的因子を比較検討した.
【結果】2群間で年齢,性別,BMIに有意な差は認められなかった.過小評価群は,正診群に比して腫瘍径が大きく,組織型はDiffuse型が有意に多く,脈管侵襲も高度であった.深達度T1b以深の症例に限って検討すると,過小評価群では腫瘍間質量が有意に多く,浸潤増殖様式はINFcの頻度が高率であった.無再発生存期間を比較すると,過小評価群では正診群よりも有意に短かった(1063日 v.s. 2128日, p<0.01).深達度診断の過小評価に関わる因子の中で,術前に判断可能なもの(腫瘍径,病変局在,肉眼型,生検検体組織型)について多変量解析を行ったところ,腫瘍径(32mm以上, p<0.01, Odds ratio (OR) 4.48, 95%CI 1.45-16.88),病変局在(U領域, p=0.01, OR 6.16, 95%CI 1.53-28.77),組織型(Diffuse型, p=0.018, OR 3.81, 95%CI 1.26-12.50)が有意な関連因子として選択された.U領域のcT1cN0であった40例において検討すると,過小評価した10例では無再発生存期間が短く,再発した3例の再発形式は,各々腹膜播種,リンパ節転移,骨転移+リンパ節転移であった.術式別では予後に差を認めなかったが,LTG施行症例には再発症例を認めなかった.
【結語】当科ではU領域の早期胃癌症例では他の部位よりも過小評価する割合が高いことを報告してきたが,特に腫瘍径が32mm以上,組織型がDiffuse型の症例に対するLPGの適応の判断は慎重に行う必要があると考えられる.
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