演題

下部直腸癌の所属リンパ節はどこまでか?=側方リンパ節・270・280・292リンパ節について=

[演者] 佐伯 泰愼:1
[著者] 山田 一隆:1, 岩本 一亜:1, 田中 正文:1, 福永 光子:1, 野口 忠昭:1
1:高野病院 消化器外科

【目的】
下部直腸癌の所属リンパ節は大腸癌取扱い規約では,腸管傍リンパ節・中間リンパ節・主リンパ節・側方リンパ節(LLN)である.大動脈分岐部リンパ節(280)と正中仙骨リンパ節(270)はその他のリンパ節であり陽性の場合は遠隔リンパ節転移として扱う.一方TNM分類では,所属リンパ節として取り扱われている.また鼡径リンパ節(292)に関しても取り扱いが不明瞭である.今回LLNと270LN・280LN・292LNに着目して下部直腸癌の治療成績を検討した.
【対象】
2001-2015年に当院で根治手術が施行された下部直腸腺癌464例.
【検討項目】
(1)全体の治療成績,(2)LLN陽性症例の特徴と再発因子・予後因子(3)270LN・280LN陽性症例の特徴と治療成績,(4)292LN陽性症例の特徴について検討.
【結果】
(1)全体の治療成績:男性:女性=298:166,平均年齢62.9歳,組織型はtub1:tub2:por/muc=248:161:55,深達度はT2以下:T3:T4=214:218:32,LLN陽性64例,270LN・280LN陽性10例,292LN陽性6例,病期はI:II:IIIA:IIIB:Ⅳ=171:107:69:88:29.5年生存率は病期別でI:II:IIIA:IIIB:Ⅳ=92:92:86:59:54(%),5年累積再発率は病期別でI:II:IIIA:IIIB:Ⅳ=9:22:26:54:55(%).LLN危険因子は,肉眼型と中枢リンパ節転移.
(2)LLN陽性症例の特徴と再発因子・予後因子の検討:LLN陽性は64例(13.8%)に認め,平均LLN転移個数2.3個.部位としては263D,283,263P,273,293の順に多く認めた.また片側のみが56例で,両側が8例.5年生存率は64.9%で,5年累積再発率は60%であった.予後因子・再発因子に関して,深達度(T4b)のみが独立因子であった.
(3)270LN・280LN陽性症例の特徴と治療成績:270LN・280LN陽性は10例(2.2%)に認めた.10例中LLN転移陰性が3例に認めたが,中枢リンパ節は全例陽性であった. 270LN・280LN陽性症例の臨床病理学的特徴として深達度,脈管侵襲が関連し,生存率と再発率は側方転移例と比較して有意な差は認めなかった.
(4)292LN陽性症例の特徴:292LN陽性は6例(1.3%)に認め全例腫瘍下縁が肛門管にあり.292LN陽性因子として側方リンパ節転移のみが独立因子.
【考察】
270LN・280LN陽性でも切除できればLLN陽性例と予後に差はなくLLN相当であり郭清の意義はあると考えられる.
292LNは,腫瘍下縁がPに存在する症例でLLN転移が疑われる症例は,術前画像検査で292LNを十分に評価する必要があると考えられた.
他臓器浸潤LLN陽性下部直腸癌は,再発率が高く予後不良であり厳重なフォロー及び強力な化学療法が必要と考えられた.
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