演題

腹腔鏡下胃切除における腹壁瘢痕ヘルニアの検討

[演者] 古川 健一朗:1
[著者] 幕内 梨恵:1, 入野 誠之:1, 徳永 正則:1, 谷澤 豊:1, 坂東 悦郎:1, 川村 泰一:1, 絹笠 祐介:2, 杉浦 禎一:2, 寺島 雅典:1
1:静岡県立静岡がんセンター 胃外科, 2:静岡県立静岡がんセンター 消化器外科

【背景】胃癌に対する腹腔鏡補助下胃切除術(LAG)は当初再建が直視下に行われており,上腹部に小開腹が置かれていた.一方近年普及してきた腹腔鏡下再建を行う完全腹腔鏡下胃切除術(TLG)では上腹部の小開腹が不要となり,より整容性に優れる臍に小開腹をおくことが一般的である.しかし,臍部切開は腹壁瘢痕ヘルニア(Abdominal Incisional Hernia:AIH)発症の危険因子であるという報告がある.そこで,小開腹を臍部に置くことがAIH発症に与える影響,およびAIH発症の危険因子を明らかにすることを目的に検討を行った.
【方法】2008年1月1日から2015年6月30日までの間に当院で胃癌に対して腹腔鏡下胃切除(ロボット支援下胃切除を含む)を施行した489例を対象とした.他臓器合併切除施行例,経過中に開腹手術施行例,術後1年以内の死亡・転院症例は除外した.AIHの診断基準は臨床的にAIHを認めるか,腹部CTで筋膜が離開し腹腔内容が筋膜外に突出している症例とした.臍部切開群(U群)と上腹部小開腹群(E群)とでAIH発症および臨床病理学的因子を比較検討した.さらに,対象集団におけるAIH発症の危険因子について解析した.
【結果】U群は194例,E群は295例.U群が有意に高齢だったが,その他の患者背景に差を認めなかった.手術関連因子では,U群で有意に胃全摘,噴門側胃切除が多く,アプローチとしてはロボット支援下手術が多く,出血量は少なく,手術時間は長かった.病理学的にU群はより進行した症例が多かった.術後腹腔内感染性合併症はU群が多かったが,創感染は両群で差を認めなかった.全症例中AIHは25例(5.1%)に発症し,そのうち5例(1.0%)でヘルニア修復術を受けていた.発症時期は中央値365日であり,全症例2年以内(163-640日)に発症していた.U群とE群にAIH発症率の差はなかった(U群:9例(4.6%) vs E群:16例(5.4%);p = 0.835).ヘルニアの発症部位は小開腹部が23例(U群9例,E群14例),E群の臍部ポート刺入部が3例(1例小開腹部と重複)であった.AIH発症の危険因子は,単変量解析ではBMI (p = 0.002),出血量(p = 0.014)が有意となり,多変量解析ではBMIのみが有意な危険因子として検出された(95%信頼区間1.094-1.388,オッズ比1.232,p < 0.001).
【結論】腹腔鏡下胃切除において腹壁瘢痕ヘルニアの発症率は,臍部切開と上腹部小開腹で差がなかった.BMI高値の症例では腹壁瘢痕ヘルニアの発症に注意が必要と思われた.
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