演題

胃癌におけるカリウムイオン輸送制御による低浸透圧殺細胞増強効果の検討

[演者] 小菅 敏幸:1
[著者] 塩崎 敦:1, 工藤 道弘:1, 山里 有三:1, 市川 大輔:1, 小松 周平:1, 小西 博貴:1, 岡本 和真:1, 藤原 斉:1, 大辻 英吾:1
1:京都府立医科大学医学部 消化器外科学

【はじめに】術中腹腔内洗浄は,手術操作により腹腔内に撒布された遊離胃癌細胞を直接的に除去および破壊できるという点で,腹膜再発に対する有効な予防手段の一つである.今回我々は,有効な腹腔内洗浄法の開発を目的として,低浸透圧刺激による胃癌細胞への殺細胞効果とカリウムチャネルブロッカー併用によるその増強効果について検討した.【方法】ヒト胃癌細胞株(HGC-27,Kato-III,MKN45)を用い,各段階の低浸透圧刺激による細胞容積変化をhigh resolution flow cytometryにより経時的に測定した.実際の殺細胞効果を確認するため,胃癌細胞に一定時間の低浸透圧刺激を加えた後,48時間再培養して生細胞数を測定した.In vivo実験では,低浸透圧刺激後のMKN45細胞をヌードマウスの腹腔内に注入し,2週間後の腹膜播種形成の程度を評価した.さらに,低浸透圧刺激時のカリウムチャネルブロッカー併用が,これらの細胞容積変化,殺細胞効果,腹膜播種形成に及ぼす影響について検討した.【結果】極度の低浸透圧刺激(蒸留水)では,細胞容積が著明に増大して最終的に破裂することを確認した.一方,マイルドな低浸透圧刺激時には一旦増大した細胞容積が徐々に元の細胞容積に戻っていく現象(調節性容積減少(RVD))を認めたが,カリウムチャネルブロッカーの併用により,RVDが抑制され細胞容積増大が長時間継続することを確認した.再培養実験で確認すると,マイルドな低浸透圧刺激のみでは殺細胞効果をほとんど認めなかったが,カリウムチャネルブロッカー併用では著明にCell viabilityが減弱することを確認した.In vivo実験において,マイルドな低浸透圧刺激のみでは多数の腹膜播種形成を認めたが,カリウムチャネルブロッカー併用により,腹膜播種形成が有意に抑制されることを確認した.【考察】我々はこれまでに胃癌細胞株を用いて,蒸留水(0 mosmol/kgH2O)刺激による細胞破壊効果およびヌードマウスでの腹膜播種形成抑制効果を報告してきた.実際に蒸留水を用いた腹腔洗浄を行った際の回収液の浸透圧は50 mosmol/kgH2O前後であったが,本検討により,RVD過程に重要なカリウムイオン輸送をブロックすることで,マイルドな低浸透圧刺激でも十分な殺細胞効果を発揮できることを明らかにした.【結語】胃癌におけるカリウムイオン輸送制御によるRVD制御を介した低浸透圧殺細胞増強効果を明らかにした.
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