演題

公共データベースを用いた胃癌ドライバー遺伝子OSBPL3の同定とその生物学的意義

[演者] 胡 慶江:1
[著者] 増田 隆明:1, 吉川 幸宏:1, 南原 翔:1, 木戸上 真也:1, 林 直樹:1, 黒田 陽介:1, 伊藤 修平:1, 江口 英利:1, 三森 功士:1
1:九州大学病院別府病院 外科

【背景】胃癌は年間約100万人罹患し,約70万人死亡する癌腫で,全癌腫罹患数の8%と死亡数の10%を占めている.近年次世代シーケンサー等の開発により胃癌の膨大な癌ゲノム情報が蓄積されつつあるが,胃癌においてDNA copy数の増加を伴うドライバー遺伝子の報告は未だに少ない.
【目的】胃癌におけるドライバー遺伝子の同定とその生物学的意義を明らかにする.
【方法】1. 胃癌DNAマイクロアレイの公共データベース(The Cancer Genome Atlas: TCGA)を用いて以下の2つの条件を満たす遺伝子群を候補遺伝子とした.①癌組織での遺伝子発現量が正常組織の2倍以上;②遺伝子発現量がDNAコピー数と有意に正相関する(相関係数>0.4).2. TCGA dataset (n=223)とCancer Cell Line Encyclopedia (CCLE)dataset (n=38)を用いて候補遺伝子がDNA増幅していることを検証し,当院の胃癌組織免疫染色で発現の局在を評価した.3. Kaplan-Meier plotter(n=876)で胃癌の生命予後との関係を評価した.4. TCGA datasetを用いたGene Set enrichment analysis (GSEA),胃癌細胞株MKN45を用いたsiRNAノックダウン実験(MTT assay, colony formation assay, FACS, western plot)により細胞増殖能及び細胞周期の変化を検討した.
【結果】1. 胃癌ドライバー候補遺伝子としてOxysterol Binding Protein Like 3(OSBPL3)を同定した.2. OSBPL3は胃癌組織と胃癌細胞株の両方において遺伝子DNAが増幅していた.また当院の胃癌組織免疫染色では胃癌細胞に高発現していた.3. OSBPL3 mRNAの高発現群は低発現群に比べ予後不良であった(Kaplan-Mayer法, Log rank test: P<0.05).4. GSEAではOSBPL3 mRNA高発現が細胞周期遺伝子群と有意に正の相関を示していた.また,OSBPL3ノックダウン細胞株はG2期とM期の細胞が有意に減少し,増殖能が低下した.
【考察】OSBPL3は主に細胞質に発現しており,細胞内脂質受容体の一つである.最近の研究でOSBPL3は293T細胞においてR-RasとAktをリン酸化(活性化)すると報告されている.R-RasとAktはいずれも細胞増殖を促進する蛋白である.本結果よりOSBPL3はDNA copy数の増加により高発現し,R-RasとAktの活性化を介して細胞周期と細胞増殖を促進すると考えられ,胃癌の癌遺伝子である可能性がある.現在OSBPL3ノックダウン胃癌細胞を用いて胃癌進行の機序をさらに解明している.
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