演題

胃癌浸潤好中球数と腫瘍浸潤リンパ球および全身炎症指標との関係

[演者] 平松 宗一郎:1
[著者] 田中 浩明:1, 西村 潤也:1, 田村 達郎:1, 豊川 貴弘:1, 天野 良亮:1, 六車 一哉:1, 前田 清:1, 平川 弘聖:1, 大平 雅一:1
1:大阪市立大学大学院 腫瘍外科学

【背景】腫瘍関連好中球(Tumor Associated Neutrophil:TAN)は,癌細胞産生のサイトカインにより遊走した好中球で,炎症性サイトカイン産生が豊富で,血管新生や抗腫瘍免疫と関与し,腫瘍増大の重要な因子とされる.一方,好中球/リンパ球比(Neutrophil-Lymphocyte Ratio:NLR)は,宿主の全身の炎症反応を反映した指標であり,様々な癌で予後因子となる.また癌微小環境下では腫瘍浸潤リンパ球(Tumor infiltrating lymphocyte:TIL)の増減が予後に影響するといった報告を多く認める.しかし胃癌におけるTANと術前NLRやTILとの関連についての報告は少ない.【目的】胃がん組織におけるTAN及びTILの浸潤と術前NLRの関連を臨床病理学的因子や予後から比較検討した.【対象】当科で2007年~2008年に施行した胃癌切除症例120例【方法】切除標本の原発巣143個,腫瘍近傍のリンパ節4~5個,総数497個を抗CD15抗体で免疫染色を行い,好中球を同定した.同様に抗CD8抗体で原発巣の同一切片の免疫染色を行い,好中球との関係を検討した.好中球は濃染色領域5視野を400倍で測定し平均値を出した.平均値の中央値(原発巣18.6個,リンパ節24.0個)より高浸潤群と低浸潤群に分類した.また対象症例の術前NLRを測定し,中央値(1.93)より高NLR群と低NLR群に分類し,それぞれの臨床病理学的因子,予後およびTANと術前NLRの関係について比較検討した.
【結果】患者背景は平均年齢63.8歳,男性87例,女性33例,pStage Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ/Ⅳは63/16/27/14,分化型52例,未分化型68例であった.原発巣のTANの浸潤は,年齢,組織型に有意差を認めなかったが,T因子,N因子,Stage,リンパ管侵襲,血管侵襲で有意に高浸潤群が多かった.リンパ節についてもTAN高浸潤群は,腫瘍浸潤,リンパ節転移に有意差を認めた.また,原発巣,リンパ節共にTAN高浸潤群で有意に予後不良であり,リンパ節内のTAN高浸潤は,独立予後因子となった.CD8陽性リンパ球と好中球の浸潤は分布に相関を認めず,散布図でも有意な相関関係を認めかった.一方術前NLRの平均値は,T因子,N因子,Stageいずれも進行に伴い増大傾向で,原発巣のTANと術前NLRでは,散布図で正の相関を認めた.また高NLR群の平均TAN浸潤数は,原発巣で低NLR群と比較して有意に多かった.【結語】胃癌におけるTAN浸潤による局所の炎症は全身の炎症と相関し,腫瘍浸潤やリンパ節転移を増大し予後不良因子となることが示唆された.
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