演題

異なる遺伝子変異をもつ巨大GISTに対し,イマチニブ投与後に切除を行い,対照的な経過をたどった2例

[演者] 与儀 憲和:1
[著者] 海保 隆:1, 柳澤 真司:1, 片岡 雅章:1, 西村 真樹:1, 小林 壮一:1, 岡庭 輝:1, 須田 竜一郎:1, 代市 拓也:1
1:国保直営総合病院君津中央病院 外科

【背景】巨大GISTに対する術前イマチニブ投与は拡大手術による術後合併症の回避や機能温存を目的として選択可能な治療戦略となりつつある.一方で,イマチニブによる治療効果は遺伝子変異により大きく異なる.今回,異なる遺伝子変異をもつ巨大GISTに対し,イマチニブ投与後に切除を行い,対照的な経過をたどった2例を経験したので報告する.
【症例1】76歳,女性.下血を主訴に受診し,造影CTで直腸前壁に子宮膣と接する11.5cm大の腫瘍を認め,大腸内視鏡下の生検でGISTの診断となった.術前イマチニブ投与を行い,腫瘍は8.0cm大に縮小し,投与6か月後に腹会陰式直腸切断術,子宮膣合併切除を行った.切除標本からc-kit(Exon11)の遺伝子変異が確認され,術後2年間イマチニブ投与を継続し,術後3年半無再発生存中である.
【症例2】69歳,女性.腹部腫瘤を主訴に受診し,造影CTで胃と連続する20.0cm大の腫瘍を認め,EUS-FNABでGISTの診断となった.術前イマチニブ投与を行ったところ,投与1か月後に腹痛を訴え,造影CTで腫瘍の増大,腹水貯留を認め,腫瘍破裂の診断で緊急手術を行った.術後イマチニブ投与を再開したが,切除標本からPDGFRA(D842V)の遺伝子変異が判明し,投与を中止.術後1年4か月で再発を認め,スニチニブ投与にも反応なく,腫瘍摘出術を行った.術後レゴラフェニブ投与を行うも副作用のため中止となり,初回手術から2年2か月で再々発を認め,腫瘍摘出術を行い,現在経過観察中である.
【考察】巨大GISTに対する術前イマチニブ投与は,腫瘍縮小が得られた場合には,被膜損傷なく安全なR0切除が可能となり,さらに直腸病変における肛門温存など機能温存にも寄与する.一方で,イマチニブ抵抗性であった場合には,腫瘍増大により切除機会を逃す可能性や腫瘍破裂の危険性があり,術前イマチニブ投与を行う際には早期の効果判定,効果予測が重要である.特にイマチニブに強い抵抗性をもつPDGFRA(D842V)の遺伝子変異はGIST全体の5-10%を占め,イマチニブ投与前に生検標本を用いた遺伝子検索を行うことで,効果予測が可能と考える.
【結語】巨大GISTに対する術前イマチニブ投与は安全なR0切除や機能温存に寄与する.術前イマチニブ投与を行う際には早期の効果判定,効果予測が重要である.
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