演題

鼡径ヘルニア嚢内嵌頓腸管に外傷性小腸穿孔を来した1例

[演者] 宮永 章平:1
[著者] 尾島 英介:1, 道輪 良男:1, 中野 達夫:1
1:浅ノ川総合病院 外科

【はじめに】鼡径ヘルニアは比較的頻度の高い疾患であり,時に腸管嵌頓を起こし血流障害による腸管壊死や穿孔を来すことが知られている.しかしながら,腹部鈍的外傷によるヘルニア嚢内の腸管穿孔を来した本邦での報告例は多くない.【症例】71歳,男性.2016年6月 PM3:30頃,原動機付自転車を運転中に普通乗用車と接触し転倒.左顔面部切創,左上肢痛を認めたため当院へ救急搬送となった.頭部CTや上腕部レントゲン写真では外傷性変化は認めず,その時点で自覚症状の訴えも認めなかったため,帰宅経過観察とした.しかしながら帰宅後に徐々に増悪する腹痛を自覚し,翌日AM1:30に再度救急搬送となった.腹部は軽度膨隆し腹膜刺激症状を認め,右鼡径部の著明な膨隆,周囲皮下出血痕も認めた.腹部骨盤部造影CTでは右鼡径ヘルニアに嵌頓した小腸を認め,ヘルニア嚢内および腹腔内に遊離ガス像を認めたことより,右鼡径ヘルニア嵌頓,腸管穿孔,穿孔性腹膜炎と診断し同日緊急手術を施行した.鼡径部切開にて鼠径管を解放したところ,外鼠径ヘルニア(Ⅰ-2)と同部に嵌頓した小腸,およびヘルニア嚢内に漏出した腸液が透見された.嵌頓腸管は腹膜切開を行わずに用手的に腹腔内へ還納した.下腹部正中切開を追加し嵌頓腸管を検索したところ,間膜対側に穿孔部を有する小腸が同定され,同部腸管を部分切除のうえ端々吻合を施行した.腹腔内観察ではその他外傷性損傷部位は確認されなかった.ヘルニア門は,メッシュ挿入による感染のリスクを考慮しiliopubic tract repairにて修復を行った.切除病理標本では,腸管穿孔部周囲粘膜の壊死所見や炎症細胞浸潤は認めず,病理的にも外傷性小腸穿孔に矛盾しない所見であった.術後経過は一時的に腸管麻痺の遷延を認めたが保存的治療にて軽快し,第19病日に退院とした.術後6ヶ月現在ヘルニア再発所見は認めていない.【まとめ】今回我々は鼡径ヘルニア嚢内嵌頓腸管に外傷性小腸穿孔を来した1例を経験した.外力によるヘルニア嚢内腸管穿孔の機序に関しては諸説論じられており,若干の文献的考察を加えて報告する.
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