演題

イレウスおよび癒着性腸閉塞に対する高気圧酸素療法の基礎的臨床的検討

[演者] 木山 輝郎:1,2
[著者] 塩澤 邦久:1, 多田 祐輔:1, 玉木 雅子:1, 金島 研大:1, 澤 宗寛:1, 藤田 竜一:1, 村田 順:1, 坂上 聡志:1, 内田 英二:2
1:朝霞台中央総合病院 外科, 2:日本医科大学付属病院 消化器外科

はじめに
癒着性腸閉塞に対する高気圧酸素療法によりロングチューブを挿入せず,手術を回避でき入院日数が少ないとの報告があった.そこで,平成26年よりイレウス管による減圧が不良である癒着性腸閉塞と遷延した麻痺性イレウスに対して高気圧酸素療法を行ったのでその結果を検討するとともに高気圧酸素療法の理論的背景について考察した.
患者と方法
当院にて平成26年1月から平成27年3月までにイレウスまたは癒着性腸閉塞のために入院加療した患者100例(男性63,女性37例)のうち高気圧酸素療法を施行した23例(男性16例,女性7例)を対象とした.手術後のイレウスの改善が4日以上遅延した11例と絞扼性腸閉塞を除外した癒着性腸閉塞12例である.治療機器は第1種装置で1人用であり,2.0ATA酸素加圧60分1日1回とした.施行前に耳抜きについて説明を行った.予定回数,施行回数,中止の理由,手術移行について検討した.
結果
予定回数は全例5回とした.耳痛のため2例(5%)が中止された.実施回数は3.0±1.5回で,イレウスと癒着性腸閉塞に差はなかった.しかし,イレウスでは全例軽快したのに対して,癒着性腸閉塞では7例(58%)が手術移行した.高気圧酸素治療を行わなかったイレウスで手術例はなかったが,癒着性腸閉塞では17例(35%)に癒着剥離術が行われていた.
考察
腸管の運動障害や閉塞により消化管は浮腫状になり低酸素状態になるため細動脈が拡張し浮腫がさらに増悪する.本療法では溶存酸素により組織中の酸素濃度が改善するだけでなく,細動脈が収縮することにより血流が減少し浮腫が軽減する.また,低酸素のため平滑筋内の乳酸が増加しているため,その代謝には通常よりも多くの酸素が必要である(酸素負債).本治療による組織中の酸素分圧の改善は治療後も約4時間持続することが報告されている.今回,腹膜炎術後などにより治療に難渋したイレウス症例でも本治療を平均3回実施し軽快した.胃管などによる減圧や薬物療法に加え蠕動運動の改善のための治療法になり得ると考えられた.癒着性腸閉塞では42%で軽快した.しかし,半数以上に手術が必要だったことから本治療3回行っても軽快しない場合には手術を行うように,手術適応の判断にも有効かもしれない.今後,前向き研究を行う必要がある.
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