演題

高度亀背の高齢者に対して腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を行った下部直腸肛門管癌の1例

[演者] 榎田 泰明:1
[著者] 富澤 直樹:1, 八木 直樹:1, 稲川 万里江:1, 岡田 拓久:1, 高橋 憲史:1, 黒崎 亮:1, 清水 尚:1, 荒川 和久:1, 安東 立正:1
1:前橋赤十字病院 外科

脊椎後弯症(亀背)は高齢者の骨粗鬆症や変形性脊椎症に伴って見受けられ,胸郭の変形に伴う心肺機能の低下や腹腔内のworking spaceが狭いことなどから腹腔鏡手術の適応の是非について議論を要する.【症例】88歳,女性.血便・頻便を主訴に当院を受診した.肛門周囲皮膚から直腸内へ連続する2型の腫瘍性病変を触知した.亀背のため,仰臥位で恥骨上端と剣状突起との距離は約8㎝と近接していた.呼吸機能検査では拘束性障害を認めた.腫瘍からの組織診はadenocarcinoma(tub1)であった.各種画像診断では他臓器への浸潤やリンパ節転移,遠隔転移を認めず下部直腸肛門管癌(adenocarcinoma) cT3 cN0 cM0 cStage IIと診断した.高度亀背のため腹腔内のworking spaceが狭く開腹手術では骨盤底へのアプローチが困難と判断し,鏡視下手術の方針とした.手術は全身麻酔下,載石位で行った.高度の脊柱後彎症があり,十分な載石位をとれないため陰圧式固定具(マジックベッド)を用いて上半身を挙上した状態で固定した.頭低位の際の頭側へのずれを予防するために両肩と陰圧式固定具各々を体位固定具でベッドに固定した.5ポートで手術を行ったが左右の肋骨弓と腸骨が近接しており上下のポート間距離を確保することが困難であった.頭低位・右下位で手術を行った.亀背に伴い肋骨弓が腹腔内に突出しており小腸の排除は困難であったが,肋骨弓の背側に小腸を差し込むように展開することで骨盤内の小腸を排除することができた.直腸左右と背側では骨盤底筋が露出するレベルまで剥離が可能であったが,ダグラス窩が腹側へ偏移しており腟後面と直腸前面の剥離操作は困難であった.会陰操作では左右後方で腹腔内と連続させたのちに直腸と腟後壁との間を切離し,標本を摘出した.腹腔内操作に戻り,後腹膜経路で左下腹部へストマを作成し,手術を終了した.手術時間は261分,出血量は136mlであった.手術当日に抜管し,術後2日目に固形物の摂取を開始した.術後には合併症を認めず術後24病日に自宅退院した.切除断端は陰性.術後4か月経過した現在再発所見を認めていない.【結語】高度亀背の症例で,開腹手術は困難と判断した症例であっても体位・ポート配置を工夫することで腹腔内操作は可能であった.今回我々は高度の亀背を有する高齢者の下部直腸癌に対して腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を行った1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
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