演題

後期高齢者における大腸癌術後早期イレウスの発症リスク因子

[演者] 深澤 智美:1
[著者] 神藤 英二:2, 梶原 由規:2, 山本 順司:2, 長谷 和生:2, 橋口 陽二郎:3, 上野 秀樹:2
1:自衛隊阪神病院 外科, 2:防衛医科大学校 外科, 3:帝京大学下部消化管外科

【背景】近年,急速な高齢化に伴い,高齢者に対する手術適応や合併症制御に関する検討の重要性が増している.頻度の高い大腸癌術後合併症としてイレウスがあり,高齢者の早期イレウスは,せん妄の発症,離床の遅延,ADLの後退,肺炎併発などの原因となり臨床的に問題となる.今回,後期高齢者における大腸癌術後早期イレウス発症のリスク因子を明らかにすることを目的に検討を行った.【方法】大腸癌初回手術2148例(1994~2011年,根治度A)を対象とした.炎症性腸疾患併存例,開腹操作を伴わない局所切除症例,データに欠損値が存在する症例を除外した.75歳以上の後期高齢者は445例(20.7%)を占めた.まず,若年者(75歳未満)との比較から,後期高齢者の臨床的特徴について検討した.次に,手術と同一入院中に発症し,食事開始の遅延もしくは食事開始後に禁食を要したイレウスを早期イレウスと定義し,その発症率を両群で比較するとともに,後期高齢者に特徴的なリスク因子があるかを検討した.【結果】①臨床的特徴:若年者と比較し,後期高齢者では女性が高率(P=0.027), 直腸癌が低率(P<0.0001), D3郭清が低率(P<0.0001), 手術時間が短い(P<0.0001), 出血量が少ない(P<0.0001)といった特徴を認めた.②早期イレウス発症率:若年者では104例(6.1%),後期高齢者では40例(9.0%)に認め,後者で有意に高率であった(P=0.030).③早期イレウスリスク因子:若年者の早期イレウス発症は性別,手術アプローチ,リンパ節転移,腹部手術の既往と有意に相関し (P=0.028, P=0.043, P=0.042, P=0.069),多変量解析では,上記4因子が独立したリスク因子となった.一方で,後期高齢者では性別,出血量が有意に相関し (P=0.0056, P=0.033),多変量解析では男性のみ(Odds Ratio=2.73, P=0.0080)が独立性を示した.【結論】後期高齢者では,手術侵襲の軽減が図られているものの早期イレウス発症率が有意に高率であった.若年者では男性,腹腔鏡アプローチ,リンパ節転移なし,腹部手術既往がリスク因子となるが,後期高齢者では男性のみリスク因子となることが示された.
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