演題

WS03-5

血液,腹水中のextracellular vesiclesの胃癌腹膜播種に対する機能解析と新たな治療戦略

[演者] 有田 智洋:1
[著者] 市川 大輔:1, 小西 博貴:1, 庄田 勝俊:1, 小菅 敏幸:1, 小松 周平:1, 塩﨑 敦:1, 藤原 斉:1, 岡本 和真:1, 大辻 英吾:1
1:京都府立医科大学医学部 消化器外科学

[背景・目的] 胃癌腹膜播種形成のメカニズムについては未だ明確には解明されていない.血液,腹水に着目し,その中に存在するextracellular vesicles (EVs)の播種形成に対する役割を解析し,新たな治療法の開発を目的とする.
[方法] 1) 当科で根治手術を行った胃癌症例について,術中出血量と腹膜播種再発の相関を検討した.中皮細胞株と胃癌細胞株を用いた接着assayを行い,血液成分の細胞接着への影響を解析した.2) 胃癌細胞株の培養液より超遠心法にて抽出したEVsを,各種癌細胞株に取り込ませることで生じる機能変化と,関連する分子の変化を検討した.また,播種結節や腹膜といった臨床検体におけるそれらの因子の発現について検討した.3) 健常人及び担癌患者の赤血球を細胞培養液で培養した上清から超遠心法で回収した血球由来EVsの各細胞への取り込みを2)と同様に観察し,細胞機能の変化を各種assayで検討した.
[結果] 1)術中出血多量群は腹膜播種再発の累積発生率において有意に腹膜播種再発を生じた.adhesion assayで血漿を添加した系において,中皮細胞と胃癌細胞の接着は促進され,ヘパリンを添加すると接着は阻害された. 2) 蛍光免疫染色にて,癌細胞由来EVsが腹膜細胞や癌細胞自身に取り込まれることを確認した.癌細胞由来EVsを取り込んだ中皮細胞と癌細胞の接着や,癌細胞自身の浸潤能は有意に促進された.EVsを取り込んだ中皮細胞は接着因子であるFN1,LAMC1の発現が亢進した.同様に臨床検体でのFN1,LAMC1の発現亢進を確認した.3) 赤血球由来EVsが各種細胞株に取り込まれる事を蛍光免疫染色で確認した.EVsを取り込んだ癌細胞株の増殖能,接着能の亢進傾向を確認した.現在腹水中のEVsを阻害することで腹膜播種進展を阻害する治療として,EVsの分泌阻害,EVsの物理的除去,抗原抗体反応を用いた阻害,取り込み阻害について,vitro,vivoレベルで検討中である.
[結語] 遊離胃癌細胞の腹膜への着床について凝固成分が何からの役割を果たしている可能性が示唆された.また,癌細胞由来のEVsが周囲の細胞に取り込まれ,癌細胞の浸潤や播種進展に有利に働く可能性が示唆された.血球由来EVsの機能解析は現在検討中であるとともに,これまで得られた知見から,難治性である腹膜播種の新たな治療に繋げる方法を模索している.
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