演題

潰瘍性大腸炎術後回腸嚢炎合併症例の臨床経過と問題点

[演者] 二木 了:1
[著者] 小金井 一隆:1, 辰巳 健志:1, 黒木 博介:1, 山田 恭子:1, 小原 尚:1, 木村 英明:2, 荒井 勝彦:1, 杉田 昭:1, 福島 恒男:3
1:横浜市立市民病院 炎症性腸疾患科, 2:横浜市立大学附属市民総合医療センター 炎症性腸疾患(IBD)センター, 3:松島クリニック

【目的】潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘・回腸嚢肛門管吻合術(IACA)後に発生した回腸嚢炎症例の臨床経過を検討した.
【対象・方法】対象はIACA施行後10年以上経過し,十分な経過観察が可能であった自験126例中,回腸嚢炎を合併した30例(男性15例,女性15例)で,現年齢は中央値46歳(23-68),手術時年齢33.5歳(12-56),手術適応は難治18例(60%),重症9例(30%), 癌またはdysplasia3例(10%)であった.観察期間中にのべ291件(4~15件/1症例)の内視鏡検査を施行した.これらの症例の回腸嚢炎の臨床経過を検討した.
【結果】回腸嚢炎発症時期は手術後中央値3.6年(0.6-8.9), 累積発生率は術後5年で13.5%,10年で23.8%であった.初回治療薬としてシプロフロキサシン(CPFX)24例(80%),メトロニダゾール(MNZ)6例(20%)を使用し,経過観察中にCPFXを30例(100%),MNZを11例(36.7%),5-ASA製剤を7例(23.3%),ステロイド注腸を3例(10%),ベタメタゾン坐剤を2例(6.7%)に使用していた.厚労省炎症性腸疾患研究班の回腸嚢炎診断基準による慢性持続型は11例(36.7%)で, 回腸嚢炎発症時期は中央値2.0年(0.6-8.4)であり,使用した治療薬は1剤のみ3例,2剤2例,3剤以上が6例であった.11例中1例は1年8ヶ月間無治療で再燃していないが,6例は1年以上治療の継続が必要で,4例は再燃を繰り返している.治療初期と治療中の最終時期に行った内視鏡検査のmPDAI(Modified Pouchitis Disease Activity Index) scoreの推移は,増加1例,不変5例,1点低下4例,2点以上低下は1例であった.今回の検討例においては回腸嚢炎が原因によるPouch failureは認められなかった.
【結語】潰瘍性大腸炎に対し大腸全摘・回腸嚢肛門管吻合術を施行し10年以上経過した症例の24%に回腸嚢炎を認め,慢性持続型は37%を占め,殆どは治療抵抗性で内視鏡所見も改善していなかった.今後,慢性持続型回腸嚢炎に対する治療法の確立が必要である.
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