演題

クローン病腹腔鏡下手術症例の術後合併症発症状況とリスク因子の検討

[演者] 中村 有貴:1
[著者] 堀田 司:1, 横山 省三:1, 松田 健司:1, 渡邉 高士:1, 三谷 泰之:1, 田村 耕一:1, 岩本 博光:1, 瀧藤 克也:1, 山上 裕機:1
1:和歌山県立医科大学附属病院 消化器外科・内分泌・小児外科

【はじめに】本邦におけるクローン病の累積手術率は発症後5年で約30%,10年で約70%と高率であり,再発のために再手術を要する症例も5年で16-43%,10年で26-65%と高頻度にみられる.そのため,手術においては可能な限り腸管を温存することを原則とし,当科においても術後のQOLや将来の再手術を考慮して,2006年から待機手術症例に対しては腹腔鏡下手術を第一選択としている.しかし,手術適応となる症例においては術前栄養状態不良の患者が多く,創感染や縫合不全,腹腔内膿瘍などの術後合併症が起こりやすいことが報告されている.また,術後合併症の増加に影響を与える因子として,術前の免疫抑制薬の使用や,瘻孔形成症例,膿瘍形成症例,高齢,手術時間を挙げる報告もある.今回当科においても,術後合併症の発症に影響を及ぼす術前のリスク因子について検討したので報告する.
【対象と方法】2006年6月から2016年10月までに当科においてクローン病に対して待機的に腹腔鏡下腸管切除術を施行した34例を対象とし,術後合併症の発症状況と年齢,病型,病変部位,手術時間,既往手術歴の有無,術前免疫抑制薬使用状況,喫煙状況,内視鏡的疾患活動度,術前栄養状態の関連について検討した.術前免疫抑制薬に関しては術前6か月以内にステロイド,生物学的製剤,免疫抑制薬のいずれかを使用した症例を使用ありとし,内視鏡的疾患活動度に関しては,敷石像,活動性縦走潰瘍,開放性潰瘍のいずれかを認めたものを活動性ありとした.また,術前栄養状態には評価指標としてCONUT法や小野寺らの予後推定栄養指数(PNI)を用いるとともに,両評価指標の算出に用いられる血清アルブミン値と末梢血総リンパ球数のそれぞれにおいても検討を行った.なお,統計学的有意差はFisherの正確確率検定およびWelch検定を用いて評価した.
【結果】全体の17.6%にあたる34例中6例に術後合併症を認め,その内訳は,創感染3例,腹腔内膿瘍2例,創感染・腹腔内膿瘍1例であった.前述の検討の結果,術後合併症を発症した症例において術前末梢血総リンパ球数が有意に低値であったことが示された.他の背景因子に関してはいずれも有意な相関関係は得られなかった.
【結語】クローン病に対する腹腔鏡下手術では17.6%に術後合併症を生じ,術前の末梢血総リンパ球数は術後合併症発症の最も有用な予測因子になりうることが示唆された.
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