演題

PP11-5

術前に卵巣嚢腫と診断した成人腸管膜リンパ管腫の1例

[演者] 柳沢 直恵:1
[著者] 細田 清孝:1, 草間 啓:1, 町田 泰一:1, 西尾 秋人:1, 中田 伸司:1, 袖山 治嗣:1, 堀澤 信:2, 渡辺 正秀:3
1:長野赤十字病院 外科, 2:長野赤十字病院 産婦人科, 3:長野赤十字病院 病理

患者は50歳代の女性で,腹痛と腹部膨満,冷えを主訴に3ヶ月前に前医,産婦人科を受診された.腹部MRI検査で,子宮の腹側に130 x 100 x 160 mmの巨大な腫瘤を認めた.T1強調像で低信号,T2強調像で高信号だった.背側に隔壁を認め,多房性の嚢胞性の腫瘤だった.明らかな造影部分は無く充実部を認めず,小腸は頭側に圧排されていた.右卵巣に腫大は認めず,左卵巣の同定は困難だった.卵巣嚢腫と診断された.手術目的で当院産婦人科に紹介され,腹腔鏡下に切除の方針となった.しかし,手術を開始し,腹腔内を観察すると,子宮および両側付属器には異常を認めず,腫瘤は腸間膜腫瘍であることが判明した.当科が手術に参加し,開腹手術に移行した.トライツ靱帯より40 cm,回盲弁から420 cmの空腸間膜に巨大な黄色の軟な腫瘤を認めた.一部の空腸を合併切除し空腸腸間膜腫瘍切除術を行った.術後経過は良好で,術後11日目に退院した.切除した腫瘤は巨大な膿疱で,内容は黄乳白色の液体だった.一部の小嚢胞の内容液は赤褐色液だった.壁の厚さはおおむね1-2 mmだった.組織学的には,壁に小型の紡錐形細胞が錯綜した像が認められ,嚢胞内面は内皮様の細胞に覆われていた.壁の最外側には同様のリンパ管様構造が多数認められた.免疫染色では,α-smooth muscle actin,Caldesmonが陽性で,CD31に陽性管腔は大小多数散見され,D2-40は,大型管腔の内面を含めて所々に陽性であった.S-100蛋白は陰性.Ki-67 LIは1%未満だった.リンパ管腫と診断された.悪性像は認めなかった.リンパ管腫の多くは頭頸部に多く,小児期に発見される.縦隔や腹腔内,後腹膜腔にも比較的稀ではあるが発生し,成人期になって発見されることもある.腹腔内のリンパ管腫の中では,腸間膜由来が最も多い.本症例では,術前のMRI検査の結果は,卵巣嚢腫を第一に疑うものであり,腸間膜リンパ管腫を鑑別として考えてはいなかった為,急遽,開腹手術に移行する結果になった.過去の報告を見ると,腸間膜由来の嚢胞性疾患が術前に診断される率は高く無く,本症例の様に術前診断が卵巣嚢腫であることも少なくない.一方,近年では,術前に腸間膜リンパ管腫を疑い,腹腔鏡下手術を行った報告もある.腹腔内や骨盤内に嚢胞性腫瘤を認めた際には,腸間膜リンパ管腫を念頭に置くことが,外科医,産婦人科医の双方にとって望ましいと考えられた.
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