演題

食道腺癌における上中縦隔リンパ節転移の術前予測因子に関する検討

[演者] 小熊 潤也:1
[著者] 小澤 壯治:1, 数野 暁人:1, 新田 美穂:1, 二宮 大和:1, 貞廣 荘太郎:1, 中郡 聡夫:1
1:東海大学医学部 消化器外科学

【はじめに】本邦では,食生活の欧米化やH.pylori感染率の低下に伴い,食道胃接合部を含む食道腺癌が増加傾向にある.これに伴い,これまで本邦ではまれであった本疾患に関する臨床研究が盛んに行われるようになった.とくに外科領域では,至適リンパ節郭清範囲は術式を決定する上で重要である.しかし,術前診断の段階での至適リンパ節郭清範囲を決定する条件についての検討は十分に行われていないのが現状である.本研究の目的は,食道腺癌に対して術前診断において的確な術式およびリンパ節郭清範囲が選択できるように,術前診断で得られる諸因子と上中縦隔リンパ節転移および再発との関連について検討し,臨床的に有用な術前予測因子を見出すことである.【対象と方法】2004年から2014年にかけて当院で根治手術を施行した食道および食道胃接合部腺癌64例を対象に,術前診断の時点で得られた臨床学的諸因子と,上中縦隔リンパ節転移または再発との関連について検討した.【結果】対象症例のうち,上中縦隔リンパ節転移または再発陽性例は23例(MLN陽性群),陰性例は41例(MLN陰性群)であった.食道造影上の食道浸潤長や腫瘍上縁と左横隔膜との位置関係についても評価した.両群を単一因子で比較すると,cTおよびcStageはMLN陽性群で高かった(それぞれp=0.022,p=0.037).2因子の組み合わせで検討すると,「T2以深かつ腫瘍上縁が横隔膜上」,N1かつ腫瘍上縁が横隔膜上」および「StageIIかつ食道浸潤長が平均以上」においてMLN陽性群が有意に多かった(それぞれp=0.003,p=0.033,p=0.015).ロジスティック回帰分析による多変量解析を行うと,「T2以深かつ腫瘍上縁が横隔膜上」のみが上中縦隔リンパ節転移または再発の独立した予測因子となった(HR=5.649,p=0.003).
【考察】食道胃接合部腺癌においては,術式を決定する上で術前の食道造影検査における腫瘍上縁と左横隔膜との位置は重要で,われわれはこれまで確実な吻合操作を行うため,腫瘍上縁が左横隔膜より頭側にある場合は開胸による胸腔内吻合が必要と考えていた.本検討から,術前診断において深達度T2以深かつ食道造影上腫瘍上縁が左横隔膜上にある症例は上中縦隔リンパ節転移または再発のリスクが高いため,開胸による確実な縦隔リンパ節郭清が必要となることが示唆された.
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