演題

PP10-6

外傷性横隔膜ヘルニアの周術期管理に対する考察

[演者] 叢 岳:1,2
[著者] 杉村 裕志:2, 野守 裕明:2, 草薙 洋:1
1:亀田総合病院 外科, 2:亀田総合病院 呼吸器外科

【背景】外傷性横隔膜ヘルニアの術後に呼吸不全が問題になることは少なくない.当院で経験した症例を元に周術期の管理について考察する.
【対象と方法】当院で手術を行った外傷性横隔膜ヘルニア10例をカルテからレビューした.横隔膜ヘルニアの病期(急性期,慢性期,閉塞期),緊急・待機手術の別と術後の呼吸不全の関連性を調べた.呼吸不全は酸素化の著しい低下,ミニトラック挿入,NPPV,人工呼吸器の使用を含めた.同様に画像所見(X線写真,CT画像でみた肺の浸潤影と横隔膜の術側・対側の位置変化)を確認した.
【結果】10症例のうち,急性期は6例(緊急手術4例,待機手術2例),慢性期は3例(待機手術3例),閉塞期は1例(緊急手術1例)であった.術後呼吸不全があった症例は緊急手術を行った5症例では2例(急性期1例,閉塞期1例)であったのに対し,待機手術5症例では4例(急性期1例,慢性期3例)であった.呼吸不全は5例までが術後3時間から翌日までの間に発症し,2日以内には改善した.画像所見で術後早期に浸潤影が出現した症例は8例あった.術側横隔膜が一時的に下降し,対側の横隔膜が挙上していく所見は7例でみられた.呼吸不全をきたしていた5例は上記の所見をともに認めた.胃,結腸の拡張を認めた2例(急性期1例,閉塞期1例)はともに呼吸不全があった.
【考察】横隔膜ヘルニアの術後呼吸不全の原因として虚脱した肺の再膨張性肺水腫と対側肺の圧迫無気肺が指摘されている.再膨張性肺水腫は3日間以上の肺の虚脱や胸腔内の過剰な陰圧がリスクとなると報告されている.ヘルニア脱出から時間が経つと虚脱した肺のリスクは高くなり,また術後は縫合修復した横隔膜が平坦化して胸腔が拡大し,陰圧がかかるため,術後のリスクは高い.周術期の対応として,胸腔ドレーンの陰圧吸引をかけないこと,リスクの高い慢性期症例については再膨張性肺水腫の発症率の高い術後48時間までは陽圧換気を行うことを考慮する必要がある.一方,腹腔内へ完納したヘルニア内容や拡張した腸管が対側の横隔膜を圧迫して無気肺を形成し,呼吸不全を助長することもある.こちらについては胃管による減圧や,特に慢性期の待機手術症例であれば腸管の前処置も考慮する.
【結語】慢性期・待機手術症例は術前の状態が落ち着いていても逆に術後のリスクは高く,対処を知っておくべきである.
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