演題

PP10-1

腹腔鏡下アプローチを中心とした閉鎖孔ヘルニアに対する治療戦略

[演者] 川中 博文:1
[著者] 廣重 彰二:1, 天野 翔太:1, 久保 信秀:1, 増田 崇:1, 福山 誠一:1, 久米 正純:1, 松本 敏文:1, 武内 秀也:1, 矢野 篤次郎:1
1:国立病院機構別府医療センター 臨床研究部、外科

【はじめに】閉鎖孔ヘルニア(OH)治療のポイントは,(1)嵌頓腸管の整復,(2)開腹or腹腔鏡手術(TEP,TAP),(3)閉鎖管の閉鎖法(縫縮,メッシュ)と考えられる.以上の観点から,OH嵌頓例に対する治療方針について検討した.
【対象】2016年11月までに経験した32例(平均83.1歳,男/女=1/31,平均BMI17.7,緊急27例,incidental 5例)を対象とした.
【結果】(1)術式選択 (a)9例でエコー下大腿後面圧迫法による術前整復を試みた.3例は整復困難であり,1例は高度イレウスのため開腹,腸壊死を認め,2例は腹腔鏡下にアプローチ,腸壊死を認め小開腹下に腸切除,3例とも閉鎖管は縫縮した.6例は術前整復可能であり,1例は手術拒否したが14カ月再発なく経過し,5例は腸切除を必要とせず,2例では腹腔内アプローチでメッシュを留置し(TAPP法),3例では腹膜外腔アプローチに切り替え,鼠径床・閉鎖孔それぞれにメッシュを留置した(TEP法).(b)術前整復が試みられていない18例では開腹術が選択され,13例では腸切除,閉鎖管縫縮がなされ,5例では腸切除は必要なく,4例で縫縮,1例でメッシュ留置された.(c)incidentalの5例はTEP中に判明し,鼠径床・閉鎖孔それぞれにメッシュを留置した.(2)開腹例(n=19)と腹腔鏡例(n=12)で,平均手術時間は69分,112分(p<0.05)であったが,平均術後入院日数は15日,9.5日(p<0.05)と腹腔鏡例で有意に短く,Clavien-Dindo grade III以上の合併症は3例(15.8%),0例(N.S),死亡例は開腹例で2例(10.5%)認めた(N.S).腸切除(-)例において,開腹例(n=5)と腹腔鏡例(n=10)とで,平均手術時間は34分,95分(p<0.01)であったが,平均術後入院日数は15日,7.5日(p<0.05)と腹腔鏡例で有意に短かかった.再発は,閉鎖管の縫縮を行った20例中3例(15.0%)に認めたが,メッシュ留置の11例では認めなかった(N.S).
【まとめ】1.腹腔鏡手術は合併症が少ない傾向にあり,入院日数も短かった.2.徒手整復可能例では,腸管切除は必要なかった.以上より,嵌頓OHに対して術前整復・腹腔鏡下アプローチを中心とした治療戦略が可能と考えられた.腹膜炎のない症例では,まず術前整復を試み,術前整復が可能な場合は,待期手術も可能であり,TEP法にて鼠径床・閉鎖孔にメッシュを留置する.術前整復が困難な場合は,TAPP法で腸管の還納を行い,腸切除が必要な場合は小切開下に腸切除を行い,腸切除が不要な場合はメッシュ留置が容易なTEP法に移行する.
詳細検索