演題

PN11-5

KM-CARTによる消化器癌の大量腹水患者に対する積極的症状緩和

[演者] 松崎 圭祐:1
[著者] 池田 博斎:1, 森田 祥子:1
1:要町病院腹水治療センター

【目的】消化器癌の進行期によくみられる癌性腹膜炎に伴う大量の腹水は,強い腹部膨満感や呼吸苦などを生じて患者のADLを著しく低下させるため,抗癌治療の中止につながる.1981年に日本独自の手術法として腹水濾過濃縮再静注術(K-635)が保険承認されたが,早期の濾過膜閉塞や副作用により癌性腹水には対応できないとされ,癌治療の現場から消えている.私は濾過膜洗浄機能を有して大量の癌性腹水も迅速に処理可能な改良型システム(KM-CART)を2008年に考按して腹水全量ドレナージ+KM-CARTにて積極的に症状緩和を行っている.症状緩和,全身状態,闘病意欲の回復により,長期の在宅療養や化学療法の継続が可能になった症例を経験したので報告する.
【方法・成績】2016年10月までのKM-CART症例は,膵臓癌:541例,胃癌:488例,大腸癌:396例,肝細胞癌:379例,その他:1603例の計3407例である.腹水は1.0~27.0 L(平均6.5 L)と可能な限り採取し,濾過濃縮液:100~2500 ml(平均560 ml)を作成し,点滴静注した.回収自己蛋白量は64.0±40.0 g(最大:420 g)であった.適切に術前,術中の循環管理を行えば20L以上の腹水ドレナージも安全に施行可能で,軽度の発熱以外に重篤な副作用は認めなかった.KM-CARTの前日,翌日で症状緩和効果を判定した87例(ドレナージ腹水量の平均:8.3±4.4 L)では,腹部膨満感,全身倦怠感,腹痛,嘔気,呼吸苦,食欲不振,歩行・体動障害の身体症状7項目,不眠,不安,失望感の精神症状3項目の全項目で有意に改善を認めた.腹囲は96.0⇒82.8 cmと13.3 cm減少,下腿周囲径は33.3⇒30.5 cmと2.8 cm減少した.21.0 LのKM-CART 後に経口摂取とS-1内服が可能になり,3か月後には腹水がたまらずに職場復帰できた膵癌症例や大量の腹水貯留にて経口摂取が不能になり,予後2週間と言われて当センターを受診.10 LのKM-CART後に食欲,全身状態が改善し,無治療にもかかわらず5か月間の在宅療養が可能になった胃癌症例など,腹水の全量ドレナージ+KM-CARTによる症状緩和,全身状態の回復により,長期の在宅療養や化学療法の継続が可能となった症例を認めた.また,胃癌の腹腔内化学療法やKM-CART回収癌細胞を用いた樹状細胞ワクチン療法などへの活用も始まっている.
【結論】消化器癌に伴う大量の癌性腹水に対しても積極的にKM-CARTによる症状緩和を施行することにより,在宅療養や抗癌治療の継続につながるものと考えられた.
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