演題

PN10-1

上部消化管術後の手術部位感染性合併症の起因菌について

[演者] 瀧 雄介:1
[著者] 永井 恵里奈:1, 佐藤 真輔:1, 渡邉 昌也:1, 大端 考:1, 金本 秀行:1, 大場 範行:1, 高木 正和:1
1:静岡県立総合病院 消化器外科

【背景】2015年の世界保健機関総会で薬剤耐性に対する国際行動計画が採択されるなど,抗菌薬の適正使用は急務となっている.消化器手術後の腹膜炎の原因菌は,Enterococcus属(17.3%),Bacteroides属(15.0%),Staphylococcus属(10.3%),Escherichia coli(4.9%)と報告されているが,検索範囲内で上部消化管術後に限定した原因菌の報告は見られない.消化管の常在菌叢を反映して,術後腹膜炎の原因菌も原因部位によって異なることが予想される.上部消化管術後の手術部位感染性合併症の原因菌を明らかにすることを目的に下記の検討を行った.
【方法】2014年7月から2016年7月に当院で施行した上部消化管手術388例(胃癌:282例,食道癌:106例)中,Clavien-Dindo分類Grade2以上の手術部位感染性合併症を認めた48例(12.4%)を後方視的に検討した.結腸を再建臓器とした4例を除外し,培養採取が可能であった28例(60菌種)を解析した.
【結果】28例の年齢中央値は72歳(範囲55-84歳),男性26人,女性2人であった.原因疾患は胃癌15例,食道癌13例であり,施行術式は胸腔鏡下食道亜全摘10例,胃全摘6例,幽門側胃切除術4例,右開胸食道亜全摘3例,腹腔鏡補助下噴門側胃切除術3例,左開胸胃全摘2例であった.感染性合併症の内訳は,縫合不全19例,膵液漏6例,膿胸2例,切開部浅層手術部位感染1例であった.培養採取日の中央値は術後6日(範囲3-26日)であり,14例に培養採取前に予防的抗菌薬以外の抗菌薬投与歴があった.手術部位感染の培養検出菌は,Streptococcus属8例(13.3%),Enterobacter属6例(10.0%),Prevotella属6例(10.0%),Staphylococcus属5例(8.3%),Klebsiella属4例(6.7%),Pseudomonas属,Bacteroides属,Serratia属が各3例(5.0%),Candida属,Citrobacter属,Enterococcus属,Rothia属が各2例(3.3%)とつづいた.耐性菌として,基質拡張型βラクタマーゼ産生Klebsiella属,メチシリン耐性表皮ブドウ球菌,Stenotrophomonas maltophiliaを各1例(1.7%)ずつ認めた.
【考察】術後腹膜炎全体の報告と比較し,上部消化管術後では大腸菌,腸球菌,Bacteroides属の割合が低く,Staphylococcus属,Enterobacter属,Prevotella属が多くみられ,上部消化管の腸内細菌叢を反映していた.術後感染性合併症治療時は患者背景,原因感染症,施設内耐性菌状況のほかに,手術部位を考慮に入れた抗菌薬選択が重要である.
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