演題

PM11-7

Damage Control Strategyで下部消化管穿孔に挑む

[演者] 常俊 雄介:1
[著者] 臼井 章浩:1, 天野 浩司:1, 山田 元彦:1, 清水 克修:1, 川田 真大:1, 蛯原 健:1, 中田 健:2, 中田 康城:1, 横田 順一朗:1
1:堺市立総合医療センター 救急外科, 2:堺市立総合医療センター 外科

【緒言】
Damage Control Strategyとは,Damage Control Surgery (DCS)と,これを支えるDamage Control Resuscitation (DCR)を包括した概念で,"死の三徴"(低体温・アシドーシス・凝固障害)といわれる生理学的恒常性の破綻回避を目的とした治療戦略である.初回手術は止血・汚染回避のみに止め,全身集中治療によって生理学的機能の回復を諮り,計画的根治手術を行う.これまで外傷外科分野で発展してきたが,近年特に,重症腹腔内感染症への応用が報告されている.当科でも,敗血症性ショックでバイタルサインが不安定,高度な汚染のある大腸穿孔症例に対して,初回手術は穿孔腸管の切除と洗浄のみを行い,Open Abdominal Management (OAM)で終了し,ICUで全身状態を安定させ,またsecond look opeにて腹腔内の洗浄と状態評価を繰り返し行った後に,最終術式を決定するという治療戦略を行ってきた.今回その有効性につき検討した.
【方法】
対象は2012年10月-2016年12月までに緊急手術を施行した大腸穿孔例19例.DCSを行ったDCS群10例の治療成績と,一期的手術を完遂した従来群9例との比較検討を行った.
【結果】
DCS群では,平均3.5回の手術(ICUでのsecond look含む).根治手術までに要した日数は平均4.8日であった.両群の比較では,両群間での患者背景,年齢や重症度(APACHE2, SOFA, SIRS) に差は認めなかった.初回手術時間は,DCS群(59分)が従来群(187分)と比べて有意に短かった.DCS群では3例で吻合(covering stoma造設含む),従来群は全例でstoma造設した.カテコラミン離脱日数は有意差なく,人工呼吸管理日数,ICU滞在日数に有意差は認めないものの,DCS群で長い傾向を認め,気管切開を要する症例が多かった.術後合併症は,DCS群で1例に創部SSI,体腔内SSIが生じたが,従来群では3例に創部SSI,2例で体腔内SSIを生じた.DCS群において,早期経腸栄養開始が得られ,麻痺性イレウス発症が有意に少なかった.死亡はDCS群1例,従来群1例であった.
【考察】
今回の検討では,DCS導入で期待された,救命率向上・sepsisからの早期離脱・ICU・入院期間短縮は認めなかった.人工呼吸器管理期間延長・VAPの増加を認めた.一方で創部・体腔SSIの減少や麻痺性イレウスの減少を認め,stoma造設を回避でき,大腸癌穿孔症例でも郭清追加によりR0手術を行えた.治療成績改善に向け,特にICUでの集中治療管理に改善の余地があると考えられた.
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