演題

PK12-2

摘出膵臓の硬度変化から見た膵全摘自家膵島移植における移植成績の影響について

[演者] 吉松 軍平:1,2,3
[著者] 坂田 直昭:2, 伊東 威:1, Bashoo Naziruddin:4, 海野 倫明:2, 小玉 正太:1
1:福岡大学医学部 再生・移植医学講座, 2:東北大学大学院 消化器外科学, 3:Islet Cell Department, Baylor Research Institute, 4:Baylor Simmons Transplant Department, Baylor University Medical Center

【目的】難治性慢性膵炎では,時に治療に難渋し,疼痛,及び様々な消化器症状により患者のQOLは著しく低下する事がある.近年,欧米において慢性膵炎に対する膵全摘自家膵島移植(Total pancreatectomy with islet autotrasnplantation, TPIAT)は増加傾向にあり,その経験は徐々に蓄積・解析されつつある.本研究では,摘出膵臓の硬度変化とそれによる膵島分離に対する影響と膵島移植成績について分析した.
【方法】2006年10月から2015年12月までにTPIATが行われた120例を対象としてretrospectiveに検討した.摘出膵臓の硬度についてはback table surgeonが摘出膵臓の触診と肉眼所見から判断し,軽度な炎症性変化にとどまるsoft pancreas(SP), 中等度の炎症性変化に対応するfirm pancreas(FM), 高度に膵実質が線維化した fibrotic pancreas(FB)の3段階に分類した.
【結果】症例数の内訳は,SP 31例, FM 44例, FB 44例で,平均年齢はそれぞれ36.9, 42.2, 42.7才であった.術前の体重,BMIに有意な差は見られず,また罹病期間についても7.8, 6.6, 7.3年とほぼ同等であった.術前の耐糖能についてはSP群がHbA1c 5.45%, ΔC-peptide 5.07 ng/mLとFB群のHbA1c 6.34%,ΔC-peptide 3.06 ng/mLと比較して有意に良好であった.一方,膵島分離について摘出膵重量に明らかな差は認めなかったが,FB群でundigested tissue volumeが20.0gと多く,患者の体重あたりの膵島の収量も有意に3,545 IEQ/kgと減少していた.移植後の耐糖能は,移植後3ヵ月のインスリン使用量はSP vs FM vs FB; 12.0±2.5 vs 12.5±2.6 vs 20.2±2.8 unitsとFB群でインスリン使用量が多く(p=0.047),HbA1cは6.3±0.2 vs 6.4±0.3 vs 6.9±0.2とFB群で高かった(p=0.003).移植後6ヵ月では,HbA1cには統計上の有意差はみられなくなったものの,インスリン使用量は11.7±3.3 vs 10.6±3.1 vs 19.3±3.1unitsとFB群のインスリン使用量は引き続き有意に多かった(p=0.002).
【結論】摘出膵臓の硬度の評価は主観的ではあるものの,FB群では術前の耐糖能が障害されており,またundigested tissue volumeが多く膵島の収量も少なかった.FB群の移植後の成績は他群に比べて劣り,より早い段階でのTPIATの適応が移植後の良い結果を生むのではないかと考えた.
本研究結果は,2017年5月に行われるAmerican Transplant Congressにも抄録を提出中である.
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