演題

PK12-1

膵全摘術後症例の治療成績と課題

[演者] 高野 可赴:1
[著者] 滝沢 一泰:1, 安藤 拓也:1, 油座 築:1, 峠 弘治:1, 石川 博補:1, 大橋 拓:1, 坂田 純:1, 小林 隆:1, 若井 俊文:1
1:新潟大学大学院 消化器・一般外科学

【背景・目的】膵全摘術は術後の血糖管理,栄養管理が必須であり,手術適応を慎重にすべきと考えられてきた.近年,周術期管理の発展に伴い以前より比較的安全に行われるようになってきているとの報告が散見され,当科における残膵全摘術を含む膵全摘術後症例の治療成績についてretrospectiveに検討した.
【対象・方法】2000年から2016年12月までに当科で施行された一期的膵全摘症例15例(十二指腸温存膵全摘2例を含む),膵切除の既往があり残膵病変に対する残膵全摘症例8例の計23例を対象とした.疾患の内訳は通常型膵癌12例,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)7例,膵神経内分泌腫瘍2例,十二指腸乳頭部癌2例であった.観察期間(中央値)は41か月であり,主な検討項目は患者背景因子,術後合併症(Clavien-Dindo分類),術後在院日数,術後1年後のインスリン量(単位/日),HbA1c値, 低血糖による入院有無,生存成績(Kaplan-Meier)とし検討した.
【結果】一期的膵全摘15例のうち,7例は術中所見で腫瘍の進展範囲から膵全摘を要すると判断し術式変更しており,その内5例は通常型膵癌,2例はIPMNであった.R0手術は19例(82%)であった.術後在院日数(中央値)は42日,在院死亡例はみられなかった.術後合併症(Clavien-Dindo分類)I/II/IIIa/IIIbは1/16/4/2で下痢症が最も頻度が高く10例(43%)であった.再手術例は2例で1例は出血(大網),1例は腸閉塞であった.術後1年後のインスリン量,HbA1c値の中央値は,各々,16単位,7.2%であり,低血糖による入院は9例(39%)であった.全体の生存成績について,5年生存率は45.8%,MSTは51.3か月であり,他病死は4例(肺炎2例)であった.
【考察】膵全摘術後は膵液瘻の合併がないため,術後短期においては重篤な合併症や在院死亡例はみられず,比較的安全に行われていた. 術後の低血糖による入院は約40%にみられ,近年はインスリン自体の改良や内分泌内科との連携がはかられているが,注意を要する.腸瘻は14例に留置されていたが術後3か月以内に抜去された症例が多く,十分に活用されていない症例がみられた.十分な膵酵素の補充,消化剤,止痢剤による下痢のコントロールと経腸栄養の活用を含めた栄養管理が課題である.
【結論】膵全摘は術後の血糖管理,栄養管理に注意を要するが比較的安全に行える術式であり,適応例に施行する利点は十分にあると考えられる.
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