演題

PJ11-7

膵周囲ドレーン排液監視培養に基づいた膵頭十二指腸切除後の膵液瘻対策

[演者] 木村 憲央:1
[著者] 小田切 理:1, 石戸 圭之輔:1, 工藤 大輔:1, 脇屋 太一:1, 袴田 健一:1
1:弘前大学附属病院 消化器外科

【背景と目的】膵頭十二指腸切除術(PD)後の膵液瘻(PF)の多くは細菌感染を伴っているがその機序は不明である.PD後のPFと膵周囲ドレーン排液感染との関連を検討し,検出菌の抗生剤感受性からPFの予防および対策を考察した.
【対象と方法】2012年5月から2016年11月まで,PD術後(POD)1,3,6日目にルーチンで,膵周囲ドレーン排液からAMY測定と監視培養を施行した184例を対象とした.PFはInternational Study Group of Pancreatic Fistula (ISGPF)基準のGrade B/Cと定義した.検討1:ドレーン排液感染(POD1, 3)を含めた患者背景および周術期因子とPFとの関連を検討した.検討2: ドレーン排液からの検出菌の種類と抗生剤感受性からPF対策に有用な抗生剤を検証した.検討3: 周術期治療的抗生剤投与例(N=41)を除いた予防的抗生剤投与例(N=143)で,第二世代セフェム(CTMまたはCMZ群(N=69)とTAZ/PIPC群(N=74)に分類し,術後膵周囲感染予防の至適抗生剤を検証した.
【結果】Grade B/CのPFは65例(35.3%)に認めた.単変量解析では,男性(P=0.042),年齢>70歳(P=0.035),術前黄疸(P=0.041),主膵管径<3 mm(P<0.001),正常膵(P<0.001),術後早期ドレーン排液感染(P<0.001)がPFの予測因子であり,多変量解析では主膵管径<3 mm(Odds Ratio(OR): 2.85, P=0.011),正常膵(OR: 2.85, P=0.016),術後早期ドレーン排液感染(OR: 5.82, P<0.001)がPFの独立危険因子であった.PF群の術後早期ドレーン排液からはEnterococcus属(33.8%), P. aeruginosa(7.7%), Enterobacter属(6.2%)が高頻度にみられ,これらの菌種はPIPC, IPM/CS, MEPM, LVFXに高い感受性を示した.一方,後期(POD6)にはStaphylococcus属(29.1%), Candida属(18.5%)が高頻度に検出された.予防的抗生剤においてはTAZ/PIPCは第二世代セフェムと比較し,有意に術後早期膵周囲感染を予防していた(POD1: 2.7% vs. 29.0%, P<0.001; POD3: 17.6% vs. 34.8%, P=0.019).
【考察】術後早期の膵周囲感染はPFの危険因子であり,PF発症の減少のためには,十分な術中腹腔内洗浄による膵周囲感染の予防と,術後早期ドレーン排液培養陽性時の適切な抗生剤投与が重要であると推測された.一方,予防的抗生剤としてはTAZ/PIPCの選択が有用であると考えられた.また,後期ドレーン排液の検出菌の結果から,逆行性感染が示唆されたため,PFがなく早期ドレーン排液培養陰性時には速やかなドレーン抜去が望ましいと考えられた.
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