演題

PJ10-5

膵切除後膵液瘻に伴う仮性動脈瘤形成予防を目的とした生体吸収材料による動脈断端の被覆

[演者] 岡田 克也:1
[著者] 合川 公康:1, 上野 陽介:1, 渡邊 幸博:1, 岡本 光順:1, 山口 茂樹:1, 櫻本 信一:1, 小山 勇:1
1:埼玉医科大学国際医療センター 消化器外科

【背景】膵切除後の膵液瘻に伴う仮性動脈瘤形成は,致死的となり得る最も重篤な合併症である.特に正常膵では一定の割合で膵液瘻を生じるため,各施設で合併症予防のための工夫がなされている.これまで仮性動脈瘤形成予防を目的とした手技の工夫として,血管床への大網の被覆や,主要動脈断端への肝円索の巻きつけなどがある.当科はこれまで大網被覆を多く用い良好な成績が得ているが,感染の遷延や壊死などの原因となり得るため大網被覆に関しては否定的な意見も見受けられる.今回動脈断端部保護を目的に,同部へ生体吸収材料として既に臨床で汎用されているネオベール®を被覆し,仮性動脈瘤形成予防としての有用性を検討した.【方法】ポリグリコール酸を成分とするネオベール®は,約15週で加水分解吸収され,現在尾側膵切除においても膵離断部の被覆材として用いられている.このネオベール®(厚さ0.4mm)をトリミングし,動脈断端部(胃十二指腸動脈,脾動脈)を被覆,固定した.当科において過去1年以内に,正常膵かつ大網が十分に利用できない膵切除症例(PD;3例,DP;2例)に本手技を用いた.【結果】術後1日目ドレーンAMY中央値は722(1182-556).術後2-4週の造影CTにおいて,5例いずれも術後仮性動脈瘤形成を認めず,被覆部周囲には炎症性組織と思しき軟部影を認めた.また同部の感染や,残存動脈内腔の狭窄なども認めなかった.【考察】膵切除における動脈断端のネオベール®被覆により感染の助長などの問題は認めず,安全に施行可能であった.仮性動脈瘤出血はおよそ2-4週後に生じることが多いが,我々は過去にブタの腹腔内でネオベール®を用いた実験を行い術後1週間の段階でも材料内に線維芽細胞などの炎症細胞浸潤が認められることを確認している.動脈断端部に膵液が浸らないことが重要であり,炎症性細胞の層による隔離の効果が期待される.また吸収性材料であるため感染にも強い.本手技が仮性動脈瘤形成の予防に寄与しているかは,今後未施行群との比較が必要であるが,大網や肝円索が利用できない症例などでは動脈断端の保護として有用である可能性がある.
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