演題

PI11-7

肝動脈合併切除非再建で膵頭十二指腸切除を行ったAberrant S2肝動脈枝を有する局所進行膵頭体部癌の1例

[演者] 栗原 唯生:1
[著者] 市川 辰夫:1, 長 潔:1, 植田 守:1, 井上 豪:1, 浅沼 晃三:1, 佐野 貴之:1, 岸本 裕:1, 井合 哲:1
1:埼玉協同病院 外科

症例は61歳の男性で,背部痛の精査で膵頭体部癌と診断された.CT,MRIで遠隔転移は認めなかったものの,腫瘍陰影が総肝動脈根部近傍から胃十二指腸動脈まで広範に接し,また脾動脈にも一部で接していたため,局所進行切除不能膵癌と診断した.Gem+nab-paclitaxel療法を実施したところ,2コース半施行後のCTで腫瘍は35mmから20mmまで著明に縮小し,MRIでは腫瘍と総肝動脈および脾動脈間に間隙を認めた.CA19-9は開始時317.5U/mLであったが,18.3 U/mLに正常化した.遠隔転移の出現は認めず,切除可能と判断し手術を行う方針とした.本症例は肝S2亜区域動脈枝が左胃動脈から分岐する変異を有していたため,術前に総肝動脈をコイル塞栓して血流改変を行い,総肝動脈合併切除非再建で膵頭十二指腸切除を行う方針とした.Gem+nab-paclitaxel療法を計4コース施行後,総肝動脈から固有肝動脈,胃十二指腸動脈をコイル塞栓した.塞栓直後から, 肝S2亜区域動脈枝造影で肝右葉への良好な動脈血流を認めた.塞栓術から19日後に,膵頭十二指腸切除(肝動脈合併切除非再建,門脈合併切除再建)を行った.術後は一過性に肝逸脱酵素の上昇を認めた.術後7日目に撮影した造影CTでは肝S8表面近傍に虚血領域を認めたが,肝膿瘍の発生はなかった.術後の経過は良好で術後17日目に退院した.現在,外来で術後補助化学療法としてS1内服を施行中である.
肝動脈浸潤を伴う膵癌に対する膵頭十二指腸切除は,手術リスクに比して予後が不良であることなどから実施されることは少なかった.近年,手術技術の向上や周術期管理の進歩に加え,強力な化学療法の登場により膵癌の治療成績は改善しつつあり,肝動脈合併切除を伴う膵頭十二指腸切除術の報告が散見されるようになった.今回,我々は,Gem+nab-paclitaxel療法後,術前にコイル塞栓による肝動脈の血流改変行い,肝動脈合併切除非再建の膵頭十二指腸切除により根治的切除を行った局所進行膵頭体部癌の1例を経験したので報告する.
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