演題

PI11-5

膵頭アーケード発達症例に対する膵頭十二指腸切除術の問題点と対策

[演者] 中山 雄介:1
[著者] 杉本 元一:1, 後藤田 直人:1, 高橋 進一郎:1, 小西 大:1
1:国立がん研究センター東病院 肝胆膵外科

【はじめに】膵頭十二指腸アーケード(pancreaticoduodenal arcade:PDA)の発達は一般に,腹腔動脈狭窄によって引き起こされる代償性変化である.PDA発達を伴う症例に対して,膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy:PD)を行う際には,PDAの離断による腹腔動脈系の血流低下から,虚血性合併症 (ischemic complication:IC)が生じる可能性がある.
【対象と方法】2008年6月から2016年7月までに,当院で膵頭部腫瘍に対してPDを施行した444例を対象に,術前のMulti-detector CT(MDCT)からPDAの有無とその程度を評価し,腹腔動脈系の血流低下に関連するIC(膵液瘻・胃内容排泄遅延・肝膿瘍・胃空腸/胆管空腸縫合不全・吻合部狭窄)の発症率との関連を後方視的に検討した.PDAの発達は,2mm厚の腹部造影MDCT動脈相水平断および冠状断で下膵十二指腸動脈から胃十二指腸動脈(gastroduodenal artery:GDA)まで連続して動脈の追跡が可能なものと定義した.PDAの発達の程度は,PDAを構成する前下膵十二指腸動脈ないしは後下膵十二指腸動脈が空腸動脈第1枝の血管径より太いものをremarkable development of PDA(rPDA),細いものをslight development of PDA(sPDA),PDAを認めないものをno PDA (nPDA)と定義した.
【結果】PD施行444例中,PDA発達は49例(11%)に認められた.PDA発達49例中,rPDAを25例,sPDAを24例に認めた.実際の手術操作について,rPDAでは,GDAクランプテストで肝動脈血流の低下を認めた症例に対しては,1例に正中弓状靭帯の開放,1例に動脈再建,14例にPDA以外のアーケードの温存が施行されていた.sPDAにはGDAクランプテスト含め特別な手術操作は追加されていなかった.術後合併症について,PDA発達症例(rPDAおよびsPDA)では,nPDAに比べ,IC発症率が有意に高かった(41% vs. 26%,p=0.033).更にrPDAとnPDAではIC発症率に差は認めなかったが(28% vs. 26%,p=0.854),sPDAはnPDAに比べて有意にIC発症率が高かった(54% vs. 26%,p=0.003).
【考察】PD症例に対する術前画像評価,術中手技と術後合併症の検討から,特にsPDA症例では,術前に認識されずに十分な対策がされていなかった可能性が考えられた.描出が困難なsPDA症例に対しては,術前の詳細な血管解剖評価と,更にGDAクランプテストで血流低下を認める症例では,正中弓状靭帯の開放やPDA以外のアーケードの可及的温存により血流確保を行うことが術後IC予防において重要な可能性がある.
詳細検索