演題

PI11-3

膵頭十二指腸切除後に急性発症した弓状靭帯症候群の1例

[演者] 小塚 雅也:1
[著者] 里井 壮平:1, 柳本 泰明:1, 山本 智久:1, 廣岡 智:1, 山木 壮:1, 小坂 久:1, 井上 健太郎:1, 權 雅憲:1
1:関西医科大学附属病院 消化器外科

【背景】弓状靭帯症候群は腹腔動脈根部が弓状靭帯により圧迫されて狭窄を来す事で腹腔動脈支配臓器の血流障害を来す症候群であり,膵頭十二指腸切除術(PD)施行患者の周術期において2~7.6%に発症すると報告されている.PDでは胃十二指腸動脈(GDA)を切離する為,膵頭Arcadeからの血流が遮断される為,腹腔動脈の血流低下は,致死的な肝血流障害を来す可能性がある.今回,我々はPD術後に急性発症した続発性弓状靭帯症候群を経験したので報告する.
【症例】40歳台の男性.膵癌治療目的で当科紹介入院となった.造影CT検査で膵頭部22mm,門脈約3分の1周性に接する腫瘍を認め,cT3 cN0 cM0 cStage Ⅱaと診断した.術前化学放射療法後に,膵頭十二指腸切除及び門脈合併切除(手術時間:486min出血量:747ml)施行した.
【経過】術後2時間後に著明な肝機能上昇を認め,術後12時間後にはAST 2000,術後20時間後には2500以上と上昇を認めた.緊急造影CT検査を施行したところ,術前には認められなかった腹腔動脈根部の狭窄(弓状靭帯圧迫)を認め,肝虚血の状態であった為,緊急で弓状靭帯切開術(手術時間:65min出血量:103ml)を施行した.再手術後より肝機能改善し,術後6日目には肝機能正常化した.術後43日目に軽快退院.再手術後11日目の造影CT検査では,腹腔動脈狭小化は改善しており,肝虚血を認めなかった.
【考察】弓状靭帯症候群の術前診断は3DCT検査を用いることで容易に可能である(Sensitivity 96%). 術前に診断がつけば,腹腔鏡手術,血管バイパス手術,血管内ステント治療などによる様々な対応可能である.しかし,本症例では術前検査で腹腔動脈起始部に異常を認めず,術中GDAクランプ時の肝動脈拍動も触知可能であった為,術後に発症したと考えられた.術後に本症候群が発症した理由としては,臓器摘出に伴う血管走行の変位が疑われる.
【結語】弓状靭帯症候群の多くは術前術中に診断されるが,本症例のように術前術中評価に異常がなくても術後急性発症する可能性がある.膵頭十二指腸切除後に肝虚血を伴う症例では,弓状靭帯症候群が鑑別診断の一つとなることを念頭におかなければならない.
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