演題

PI11-2

膵頭部動静脈奇形に対する膵頭十二指腸切除術の2例

[演者] 前間 篤:1
[著者] 東 正樹:1, 西山 元啓:1, 島村 隆浩:1, 長谷川 聡:1, 岡本 和哉:1, 姜 建宇:1, 白川 元昭:1, 横山 日出太郎:1, 中村 利夫:1
1:藤枝市立総合病院 外科

【はじめに】膵頭部動静脈奇形(Arteriovenous Malformation: AVM)は極めて稀な疾患であり,治療のコンセンサスは定まっていない.我々は膵頭部AVMの手術を2例経験,その治療について膵頭部AVM特有の問題を検討した.【症例1】54歳男性.4年前に十二指腸潰瘍出血に対する手術既往が他院であり.消化管出血・貧血の精査で当院へ.CTにて膵頭部に「メデューサの頭様」の血管増生あり,動脈相で門脈系が早期から造影されることより膵頭部AVMと診断.出血は異常血管の一部が十二指腸粘膜下で破綻したことが原因であった.下膵十二指腸動脈(IPDA)に対する動脈塞栓術(TAE)を術前に施したのちに膵頭十二指腸切除術(PD)を施行.動脈血化した多数の増生血管の処理に難渋した.手術時間582分・出血量7200ml.術後合併症なく12日目に退院,65ヶ月経過し再発なし.【症例2】52歳男性.A型急性大動脈解離で緊急手術.その際のCTで無症状だが症例1と同様の膵頭部AVMを指摘.本人と相談の上手術の方針としPDを施行.手術時間655分・出血量2200ml.術後合併症なく17日目に退院,19ヶ月経過し再発なし.【考察】膵頭部AVMは壮年男性に多い疾患で,進行すると増生血管の十二指腸・胆管内腔への破綻出血や門脈圧亢進による肝硬変・食道静脈瘤破裂といった,時に致命的な合併症を引き起こすことが知られる.治療は切除(PD)かTAEが選択されることが多いが,TAEの有効性は議論が分かれる.膵頭部AVMには胃十二指腸動脈(GDA)・IPDAのほかに多数の側副流入血管があり,これらすべてを塞栓することが難しいことによる.症例1では術前にIPDAを塞栓してあったが,術中GDAを結紮してもなお出血に難渋したことから,結果的に術前TAEは有効とは言えなかった.PDは根治的な治療法であるが,最大の問題は術中大量出血のriskである.自験2例で確認できたことは ①膵頭神経叢周囲に発達した多数の流入・流出血管を固く線維化した周囲組織が包み,これらの血管処理が困難 ②動静脈吻合により静脈圧が高く容易に出血 の2点であった.詳細な記載のある本邦報告10例(含自験例)の出血量は580~10013ml(中央値3705ml)と大量出血例が多く,膵頭部AVMに対し手術を計画する際は術中出血の対策を十分に施したうえで手術に臨むべきと考えられた.【結語】膵頭部AVMに対してPDは有効な治療法であるが,手術中とくに膵頭神経叢切除の際は大量出血に十分留意すべきであると考えられた.
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