演題

食道切除再建術後の吻合部合併症発生の要因と低減に対する当院の取り組み

[演者] 西川 勝則:1
[著者] 高橋 慶太:1, 湯田 匡美:1, 田中 雄二朗:1, 松本 晶:1, 谷島 雄一郎:1, 星野 真人:1, 矢野 文章:1, 三森 教雄:1, 矢永 勝彦:1
1:東京慈恵会医科大学附属病院 消化器外科

(背景・目的)近年,食道癌手術は内視鏡手術の導入や周術期管理や医療技術の進歩により安全に施行できるようになってきた.しかし,このような技術進歩に関わらず縫合不全(AL)や術後吻合部狭窄(AS)などの吻合部に関わる合併症(AC)は,他の消化管手術に比べ未だ高率である.その原因として食道再建は,ほかの消化管手術に比べ手術侵襲が大きいだけでなく再建臓器や再建経路,吻合法など複合的な要因も大きく影響があると考えられている.そこで改めて今回,AC発症の原因となる因子を検討し発生予防や対策について検討したので報告する.
(対象・方法)食道亜全摘胃管再建された194名のうち178名が胸骨後経路(RS),16名が後縦隔経路(PM)を利用した.全患者で胃管作成後にサーモグラフィー(TI)を用いて胃管を撮影し,TI画像から胃管吻合部の血流評価としてAnastomotic viability index (AVI)を計測した.また術後CTの矢状断画像から胸骨切痕から食道胃管吻合部までの高さを吻合高(Ah)として計測した.AVI値やAh値の至適カットオフ値はReceiver operating characteristics (ROC)によって算出した.
(結果)全体でALが9.3%,ASが19%に生じた.ALやASの発生に関してRSとPMの間に有意差は認められなかった.AVI値が0.62以上でALの発生率は1.4%,一方0.62未満では34%であった (P<0.001).ASを生じる重度なALのAVIカットオフ値はROCから0.59と計算された.AL発生に関して併存疾患,吻合方法,Ah(≧1.5cm),AVI(<0.62)が単変量解析によって有意差な項目であった.多変量解析では上記4要因中,AVI(<0.62)が唯一のAL発生の独立因子であった(P<0.001).対象をRSに限定するとAVI(<0.62)以外にAh(≧1.5cm)もAL発生の独立因子であることが判明した(AVI: P<0.001, Ah: P=0.02).
(結論)AC発生を低減させるために胃管の高AVI値(≧0.62)での頸部吻合を推奨する.さらにRSにおいては胸郭入口部での狭スペースによる胃管の圧排を避けるために,食道胃管吻合部を胸骨切痕より低位にすることが望ましいと考えられた.胃管の吻合部におけるAVI値が<0.6で且つAL発生を助長する要因が合併する場合は,ASを生じる重度なALや胃管壊死を生じるリスクが高くなり頸部での血行再建付加が勧められる.
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