演題

粘膜下腫瘍様の発育形態を呈した胃粘膜癌の一例

[演者] 米本 昇平:1
[著者] 今西 俊介:1, 阿久津 泰典:1, 上里 昌也:1, 羽成 直行:1, 早野 康一:1, 村上 健太郎:1, 加野 将之:1, 林 秀樹:2, 松原 久裕:1
1:千葉大学大学院 先端応用外科学, 2:千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター

粘膜下腫瘍様の発育形態をとった稀な胃癌を経験したので文献的考察を含め報告する.
【症例】64歳, 女性. 検診で胃体上部に粘膜下腫瘍様の病変を指摘され, 生検にてGroup1であり経過観察されていた. 1年3か月後の再検にてGroup5の診断となり当科へ紹介となった. 内視鏡では穹窿部大弯前壁に25mm大の正常粘膜で覆われた, 頂部に5mm大の深い管腔状の陥凹を持つ粘膜下腫瘍様の隆起を認めた. 陥凹辺縁から生検するもGroup1.2であった. EUSでは第3層の立ち上がりを認め粘膜下浸潤が疑われた. PETでは原発巣にSUV8.7の高集積を認めたが, 透視やCTでは粘膜下腫瘍様の所見のみで胃癌としては非典型的なため再検査を施行した.再検査では内視鏡下に腫瘍頂部の陥凹からボーリング生検を施行し高分化腺癌の診断となった. 以上より胃体上部大弯のcT2, N0, M0, StageIBの診断となり開腹胃全摘(D2)脾臓合併切除術を施行した. 切除標本の病理組織学的所見は腫瘍頂部から憩室様に粘膜および粘膜筋板が内反し, 異型腺上皮が陥入していた. 内反した粘膜筋板は腫瘍底部でも連続性が保たれており粘膜癌の診断となった. 現在術後4か月無再発生存中である. 【考察】胃癌が粘膜下腫瘍様の形態を示すことは稀であり, 胃癌全切除例の0.53~1.27%と言われている. 医学中央雑誌にて「胃癌」「粘膜下腫瘍」で検索した209例と自験例を合わせた210例で術前診断や発育形式などについて検討した. 初回の生検にて胃癌と診断された, または疑われた症例は46%であり, 再検査などを重ねた最終的な治療前の診断も胃癌とされたものは75%であった. 治療まで複数回生検を要する症例や, 初診から治療まで1年以上経過観察された症例も少なくなかった. 治療まで1年以上経過観察された症例の初回の生検結果でGroup4.5の診断となったものは8%のみであった. 粘膜下腫瘍様の形態をとる発育形態は癌の浸潤方向, リンパ球浸潤の程度, 粘液産生など諸説報告されているが, 自験例のような憩室様の発育形態を示したものは4例と極めてまれであった. 憩室様に陥入した粘膜に発生した癌により粘膜筋板が押し上げられ深達度診断を困難にしていたと考えられた. 【まとめ】粘膜下腫瘍様の腫瘍を認めた場合も, このような発育憩室を示す胃癌があることを念頭に置く必要がある.
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