演題

Leriche症候群に合併した胃癌手術症例の1例

[演者] 石毛 孔明:1
[著者] 里見 大介:1, 豊田 康義:1, 利光 靖子:1, 福冨 聡:1, 榊原 舞:1, 山本 海介:1, 守 正浩:1, 佐々木 亘亮:1, 森嶋 友一:1
1:千葉医療センター 外科

症例は75歳,男性.心房細動,閉塞性動脈硬化症(Fontaine Ⅱ,Leriche症候群)で当院循環器内科フォロー中.貧血の進行を認めたため,精査目的に上部消化管内視鏡検査を施行.胃前庭部後壁に,白苔のある不整な潰瘍を伴う隆起性病変を認めた.同部生検結果はGroup5,signet ring cell carcinomaとなり,手術目的で当科紹介となった.術前造影CT検査では,明らかな遠隔転移やリンパ節腫大は認めなかった.腹部大動脈は腎動脈分岐部レベルから大腿動脈手前まで動脈閉塞の所見を認め,大腿動脈より末梢の下肢動脈に関しては,下腹壁動脈などの腹壁の動脈および腹直筋内の動脈などの側副血行路を介し描出された.胃癌(L,Post,cT2,N0,M0,StageⅠB)に対し,幽門側胃切除術(D2,B-Ⅱ再建)を施行.腹部側副血行路の血流障害に留意し,腹直筋を傷つけないよう上腹部正中切開での開腹とし,開創器を用いたが必要最低限術野を確保できる程度広げるのみの使用とした.また術前,術後に足背動脈の触知を確認することで,下肢に大きな血流障害を認めていなか,簡易的な確認を行った.最も留意した点はドレーン留置に関してであった.留置しないことも考慮したが,既往歴に血管病変を持っており,縫合不全のリスクを踏まえドレーン留置は行う方針とした.従来通りの側腹部からのドレーン留置では,腹壁の側副血行路を傷害する可能性も考えられたため,上腹部正中切開創の最上部から閉鎖式吸引ドレーン(バード® チャネルドレーン 19Fr.)を吻合部近傍に留置し,手術終了とした.術後経過は概ね良好であり,術後創部感染もドレーン留置部あわせ出現せず,軽快退院された.現在は再発等認めず,定期外来フォロー中である.Leriche症候群に消化管悪性腫瘍を合併した報告例は極めて少ない.下肢の血流障害を来さないよう,側副血行路を出来る限り損傷せずに手術を行うことが重要である.ドレーン留置に関しても術前に検討し,最も安全な留置法で行うことが必要と考える.今回われわれは,Leriche症候群に合併した胃癌手術症例の1例を経験した.手術時に当院で行った対策と若干の文献的考察を加え報告する.
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