演題

遺伝性びまん性胃癌の一切除例

[演者] 森田 信司:1
[著者] 中島 健:2, 伊藤 麻衣子:1, 佐藤 雄哉:1, 和田 剛幸:1, 深川 剛生:1, 小田 一郎:2, 片井 均:1
1:国立がん研究センター中央病院 胃外科, 2:国立がん研究センター中央病院 内視鏡科

症例は45歳,男性.健診の上部消化管内視鏡検査で胃体下部に腫瘍性病変を指摘され,当院紹介受診となった.体下部の病変は大弯に陥凹を伴う発赤調の隆起を認め,周囲のひだの肥厚を伴い,生検で印環細胞癌が検出された.胸部腹部CTでは明らかなリンパ節転移なく,遠隔転移も認めず,進行胃癌(cT4a(SE)N0M0 cStageIIB)の診断にて幽門側胃切除を施行した.術後病理検査結果では,体下部大弯の病変は肉眼型0-IIa+IIc,60mm大で深達度SEの病変であった.その他に,術前内視鏡では認識できなかった粘膜に限局する0-IIc病変を8箇所に認めた.病歴の詳細な聴取にて,父方の兄弟4人と母方祖母がそれぞれ胃癌で死亡していることが判明した.遺伝性びまん性胃癌が疑われ,術後に残胃の内視鏡観察を行った所,褪色調の浅い陥凹性病変を数カ所認め,生検にて印鑑細胞癌が検出され,追加の残胃全摘術を施行した.残胃の病理検査結果では,5mm未満の0-IIc病変を計25箇所に認めた.いずれの病変も粘膜に限局しており,リンパ節にも転移を認めなかった.遺伝子検査にてCDH1に病的変異を認めた.術後経過は良好で,現在外来にて術後補助化学療法を施行中である.遺伝性びまん性胃癌は若年発症する常染色体優性遺伝の疾患であり,E-カドヘリンをエンコードするCDH1の遺伝子異常により引き起こされることが知られている.本邦では胃癌の罹患数が多いため,診断基準を満たす患者を絞り込み,保因者診断を行うのは現実的には困難である.そのため,日本人の遺伝性胃癌におけるCDH1の異常についての報告例は少ない.今回我々は,術前診断が困難であった遺伝性びまん性胃癌の一切除例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する
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